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初めて1人でADをする撮影が決まってから2週間。

高松さんについてもらってはいるものの、ほとんどの作業を1人でこなし、撮影後にアドバイスをもらうような日々を送っていた。

そして、ついに迎えた撮影当日。


「今日はよろしく!」

『ひっ!』


早くから撮影部屋に籠り、必要な小道具やモニターを見たり進行を確かめたりしながら、カンペのスケッチブックを見返し、もう何度目かわからない最終チェックをしていた時。

勢いよく撮影部屋に入ってきた渡辺さんに、いつも通り驚かされつつ声をかけられ身体が跳ね起きた。


『え、も、もう撮影時間ですか?!』


慌てて腕時計を見ると、撮影時間まではまだあと1時間もある。


「いや、今日1人AD初陣だし、どうしてるかなと思ってAちゃんの様子見に来ただけ。で、どう?大丈夫?いけそ?」


渡辺さんの言葉にホッと胸を撫で下ろしつつも、依然心臓は早いままで、また身体が硬直し始めてしまう。

これまで入念に準備して来たこと、高松さんのアドバイス、渡辺さんの支え、色んなことを自信に変えればいいのに。

やはり当日、この場所に立って本番を思うと、血の気が引く思いがするのは確かだった。


『そう、ですね。やれるだけの事は、やってるつもりなんですけど…やっぱり、不安は不安、ですね…』


大丈夫ですと笑顔で胸を貼りたかったのに、やはり渡辺さんの前では素の自分が出てしまって、うまく笑えずにぎこちなく返答を返す。

自信なく本番に向かうことを吐露してしまうなんて、出演者に対するADの態度としては0点かもしれない。


「だぁいじょぶだって!!めちゃくちゃ一生懸命準備してたじゃん!それに、出るの俺と河村さんだし、もしなんかあったとしても、絶対フォロー出来るから!安心して」


そう、1人でADを担当することになったのは、渡辺さんと河村さんが出演するクイズノックと学ぼうの2日目だ。

オリエンテーションや1日目のライブを高松さんと共に担当していたので、大まかな流れや作業はほぼ頭に入っている。

今回はライブではなく収録であることに多少の安堵感はあるものの、それでも上手く撮影を進行して行けるのかは私にかかっている。

失敗は、したくない。

無意識に俯いて、手に持っていたスケッチブックをギュっと握りしめた。


「ほらもう、そんな顔しないでよ。Aちゃんはいつもみたいに笑って、見守っててくれていいんだって」


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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時

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