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 好きだよ、大好きだよ、愛してるの。
 馬鹿みたいにそんな言葉しか出てこなくて。


 もっとちゃんと説明しなくちゃ、理由を言わなきゃって思えば思うほど涙が溢れて止まらない。


 そんなどうしようもない状況なのに、回された手から伝わってくるのは苛立ちなんて1ミリも含まれない……確かな愛で。

 どうしようもなく涙が止まらない。


「…ごめんなんて言わないでよ」
『っ、』
「それより好きって言って」
『っ…すき、だよ』


 ぴったりとくっついていた身体に少しだけ隙間が生まれて視線が交わった。




「僕の方が、すき」




 零れる涙を拭う手は私の得体のしれない不安まで一緒に取り払ってくれるみたい。

 交わる視線からは安心を流し込まれてるみたい。

 彼の唇から紡がれた言葉は私の心を融かしてゆくみたい。


 さっきまで死んでいた心は、熱を送り込まれて生き返る。どきどきと音を立てる心臓が、生きてると証明になって嬉しくて堪らなかった。


「ねえ、一緒に暮らそう。」


 彼の口から飛び出た衝撃的な言葉に、私は瞬きを繰り返す。


『……え?』
「1人でここに閉じ籠るの、Aの癖でしょ」


 そう言って彼はふっと微笑んだ。


「ずっと気付いてたけど見せたくない部分があるのが人間だって…そう思い込んで、逃げてたんだと思う」
『っ、』
「頼られるまで待とうって逃げてた」
『ちがうよ、』


 私が何度も「違う、逃げてなんかない」と口にしても彼は優しい顔で首を横に振るだけ。

 その微笑みは紛れもなく愛おしさが滲んでいて。


「でももう、待てないから」


 「僕が見えないところで泣かせたくない。忙しさを傷付ける理由にしたくない。それから――」と紡がれた言葉達は私の気持ちを沈ませてた全てだった。

 よく分からないナニカに悩んでいたはずなのに、祥彰は何でも分かっちゃうんだね。


「おいで」
『祥彰……!』


「Aが落ち込んでても、引っ張り上げる。

――僕に任せて?」




 そう言って指が絡んだ。
 …所謂、恋人繋ぎ。




「僕がいつでも、手を引いてあげるよ」




.
lead by the hand
[手を引く]

――引いてくれるこの手を
もうずっと離したくないとさえ

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作者名:遊馬 | 作成日時:2020年6月13日 21時

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