*H a n d s . (ページ19)

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『……いや、言ってよ。』

　大学内で話し掛けられている時“隣の方って？”とか“何で一緒に歩いてるんですか？”とかいう飛び火が来ないのは、彼自身が誤解のないよう発言してるからだと気付かされて。

　そうやって守ってくれてたことを間接的に知る。

　自分からは言ってこないのが狡くて。
　きゅう、と胸が締め付けられる感じがした。

『まさかね、』

　私が感じた胸の痛みは、痛いだけじゃない…心地良いもので。

　その違和感に気付かないうちにそっと蓋をした。

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　気付いたら、彼に守られていて。

　気付いたら、蓋をしたはずの気持ちに名前が付いて。

　……好きになっていて。

　数週間空いて久々に顔を合わせただけなのに顔に熱が集まった。

「久々。研究は進んでる？」
『え、いや、』
「何？しどろもどろ。熱でもある？」
『な、ナ！ないない！！』
「……変すぎ。」

　ふっと笑う柔らかな表情に心臓が痛いくらい音を立てる。

　友達じゃいられないだろ、と捲し立てられてる気分。

　“何でもないよ”じゃ取り繕えなくて。

　何度も問われる“どうしたの？”って言葉に流されて、自覚したばっかりの好きを紡ぐしかなくなってしまった。

『何でもないよ！……ただ、』
「ただ？」
『好きだって、気付いただけで』
「……はい？」

　ああほら、怪訝な顔。

　これだから言いたくなかったのに！と半ばヤケクソになりながら“鶴崎くんが好き”と言うと、少しの間固まった。

「僕も好き」

　聞こえてきた言葉は信じられないもので、ドクンと体温が1℃上がった気がする。

『……へ、え？』
「Aが好きだよ」
『っ、』

　吃驚して声を出せずにいると、急に腕を引っ張られて。

　彼の胸に飛び込む形になった時、噛み締めるようにぽつりと呟かれた言葉。

「――やっと、か」

(テレビというツールで外堀を埋められていたということに気付くのは、もっと先の話。)

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―― だから私は、
あなたの手の中に堕ちたのです