褪色する春＿skab

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ふわーっとぼやけて広がる世界。
ん、俺、…あれ。
あれ？
一気にピントが合って、自分の部屋では無い場所にいることに気付く。


「あ、起きた？」
「っ、あ。」


にゅっと現れた佐久間さんの顔で視界が埋まって、思考とか諸々が一回固まる。
…落ち着け俺。
そうだ、確か酔って気持ち悪くなって…。


「体はどう？」
「っ、大丈夫です。」


慌てて上半身を起きあがらせる。
けど、その瞬間ズキリと頭に痛みが走る。


「全然大丈夫そうじゃないじゃん。
んな気ぃ遣わなくて良いから。」


ぽんぽんと、頭に優しい重みが乗せられる。
佐久間さんの手だ。
そんなの子供の時に親にされたかもしれないけどどうだったかな…、ってくらいされ慣れないことで、ぽかんと口が半開きになる。


「ちょっと待ってて。」


そう言って佐久間さんが背中を向けた。
一旦落ち着こう、と自分に言い聞かせて視線を落とせば、自分の着ているものの変化に気付く。
まさかこれって。
そんな風にある仮説が浮かぶ。
それとほぼ同時にミネラルウォーターが入ったコップを持って佐久間さんが戻って来た。


「はい、水。」


差し出されたそれを有り難く受け取る。


「ありがとうございます。」


早速一口飲めば冷たいそれが体を通って、通った場所がなんだかすっきりした気がする。


「あと洋服なんですけど、これって、」
「ああ、覚えてないか。
とりあえず寝て休んだ方が楽になるよって話になったんだけど服が寝にくそうだったからさ。
俺の貸すよってことになったんだけど。」
「ありがとうございます。
すいません、あんまり覚えてなくて。」


話を聞いてもなんだかピンと来なくて、自分の泥酔具合を改めて思い知る。


「良いの良いの。
俺も心配になって勝手に連れて来ちゃったし。
もうちょっと寝る？」
「いや、そういう訳には。」


慌てて首を横に振る。
そうしたらまたズキンと痛みが走った。

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