褪色する春＿skab

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「ごちそうさまでした。」


言いながら目をこする。
お腹いっぱいになったらまた眠くなってしまった。
ダメだ、体内時計が狂いまくってる。


「眠くなっちゃった？」
「うん…。」


佐久間に気を遣うなんてことは即断念して素直に頷いた。


「じゃあ一緒にお昼寝しよっか。」


俺の皿まで持った佐久間が頭をポンポン撫でて


「ちょっと待ってて。」


とキッチンの方へ消えてしまった。





「んははっ、阿部ちゃん目がしょぼしょぼ。」
「だって眠い…。」


戻ってきた佐久間に笑われた。


「眠いのに待たせちゃったね。
ごめんごめん。」


俺の分まで片付けてくれてたのにそんなこと言って頭撫でられてさ。
これはほんと、佐久間にとっての桜みたいな人も絶対佐久間のこと好きになるよ。


「片付け、ありがとう。」
「どういたしまして。
ほら、お昼寝しよ。」
「ん…。」


いつも通り佐久間が先に入って、手前が俺。
折角目の前に佐久間がいるけど瞼が重すぎてもうダメ。


「阿部ちゃんってさぁ。」
「んー、」


話しかけられてどうにか返事をしようと頑張るけど、返事になってるんだかなってないんだか。


「目、かなあ。」
「んー？」


何の話だろ。
よく分かんない。


「莉子に似てるの。」
「っ、」


その言葉と、それから目元を指で撫でられたことに驚き過ぎて、あんなに重かった瞼が持ち上がった。
似てる？
なんで、急にそんな話。


「形、なんとなく似てんのかな、って。
ずっと考えてたんだけど。」


ずっと？


「言われない？」
「目とかは分かんないけど、昔は姉弟似てるって言われることもあったよ。
でも最近は無いかな。」
「そっかぁ。」


うーんと考えるように斜め上に視線を向けてる。
ねえ、それってもしかして…、未練がある、とか？
だって俺を通して、ずっとそっちを見ていたんでしょ？


眠気なんてどこかに飛んでいってしまったけど、話したい言葉が見つかるわけでも無かった。
ううん、今は寧ろ、全てを遮断してしまいたくなってる。
だからきゅっと目を瞑って、あらゆるものを排除しようとした。
だって、出来るなら知りたくなかった。
今まで俺にしてくれた優しさは全部、未練があったが故にだなんて。

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