褪色する春＿skab

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「ううん。
阿部ちゃんが俺の服着てんの見るの好きなんだよね。」
「どういうこと？」


後ろを振り返って佐久間を見る。


「こっちの話。」
「何それ。」
「んー、とりあえず可愛いってこと。」
「益々意味分かんない。」


朝から自分より大きい男に可愛い、とか。
そんなよく分からない佐久間と、週末はまたお泊まりで遊ぶ約束をした。
洋服洗って返さないといけないからね。
それから佐久間のいってらっしゃいに見送られ、ボルダリングへ。





「久しぶり。」


そう皆へ声をかけたら、首を傾げられた。
え、何。
俺なんか変？
思わず自分をきょろきょろ見直す。
そうしたらふっかに


「なんか服の感じ変わった？」


と聞かれた。
翔太と舘さんにも


「それだ、違和感の原因。」
「何かあったの？」


って言われる。


「話の流れで…、人んちに泊まることになって、それで服借りただけだよ。」
「今人って言う前にめっちゃ考えてたじゃん。
何、彼氏？」
「は、照何言って、」


や、確かに人に話すにあたり佐久間をなんと言うべきかはちょっと悩んだよ。
でも友達って言えば良かったんだよね。
俺は何に迷ったんだろう。
そんなだからなんか変に勘ぐられちゃったし、ああ、俺のバカ。


「だって阿部ちゃん可愛いって男にも人気だったし、そんな違和感無いよ。」
「変なこと言わないでよ。
違うってば。」


ふっかまで便乗してるし、この流れじゃ絶対翔太ものってくる。
舘さん助けて。


「分かった、その服の相手のこと好きなんだろ。」
「は、ちが、」
「阿部、顔真っ赤だよ。」


あれ、舘さんにも助けてもらえなかった。


「違うってばほんと。」
「またまたー。
つうか相手も俺らに牽制するために自分の服阿部ちゃんに着せてたりして。」


佐久間が、牽制？
ぼっと顔が熱くなる。


「ふ、ふっかのバカ！」
「阿部ちゃん口悪くなってるよ。」
「分かりやすっ。」
「だって、そんな、有るわけ無いこと言うから！」


恋愛小説や漫画じゃあるまいし、佐久間にとって俺は友達だし。
だからそんな、王道ストーリーみたいなこと起こるわけない。
変な想像させないでよ。


「でもそうだったら良いなと思う相手だから、阿部は焦ってるんだよね。」


…ああ、もう。
全然気持ちが隠せてないのか、読まれまくってる。
佐久間への好きが、昨日二人で見た桜みたいに、満開になって溢れ出してしまってるのかもしれない。

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