褪色する春＿skab

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コーヒーショップを出て佐久間の家へ戻る途中


「阿部ちゃんは明日何すんの？」


って聞かれた。


「明日は去年のお花見してた高校時代の友達とボルダリング。」
「あれ、塾は？」
「先週で最後の授業が終わったんだ。
二年生までって契約でやってたから。」
「へえ。
じゃあさ、そのボルダリングってどこでやんの？」


佐久間もボルダリング、興味があるのかな。


「こっから二駅行ったとこ。」
「まじ？
じゃあさ、」
「うん。」
「今日も泊まってけば？
いったん帰んのめんどくさいでしょ？」
「え、」


いや、確かに佐久間の家からの方が俺の家からより近いけど。


「でも長居するの悪いし、勉強もしたかったから。」
「持って来てる難しそうな本の？」
「そうそう。
それに服だって一泊分しか持って来てないし。」
「うちで勉強したら良いじゃん。
服も俺の着たら良いし。」
「でも、」
「嫌？」


嫌とかじゃなくて、佐久間の迷惑になりたくなかっただけなんだけど。
そんなに勧めてくれるってことは、良いの？


「嫌とかじゃないよ。
佐久間が居て良いなら、お邪魔します。」
「じゃあ決まり！
帰ろ帰ろ。」


手を取られる。
なんだか佐久間の足取りがさっきより軽いような気がするのは都合良く解釈してるだけ？
それからこの手は、繋いだまま帰るつもりなの？


「ねえ、手。」


そう言ったら佐久間が


「ん？」


とこっちを振り返った。
それから春の澄んだ青空に負けない程ニパっと笑って、


「うん。」


とだけ言った。
何がうんなのか全然分からないけど。
家に着くまで本当にずっと手を繋いだままだった。



そんな訳でもう一泊したから、朝に佐久間の服を借りた。
ローテーブルで昨日の夜ご飯の時一緒に作っておいたおにぎりに海苔を巻いて食べる。
佐久間は後で食べるって。
多分俺が出たらまた二度寝するんだろうな。


「美味しい？」
「うん。」


そう答えたらベッドに座ってた佐久間の腕がにょきりと現れて、俺の首に巻き付けられる。


「何？」
「いや？
阿部ちゃん俺の服着てるなーって思って。」
「うん、違和感？」


系統違うもんね。

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