褪色する春＿skab

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「何食べる？」


メニューが二冊あるのに佐久間が一冊を一緒に見ようと真ん中に置く。
きっといつもの友達相手ならもう一冊あるよと伝えるのに、佐久間が相手だと多少見づらかろうとそれは言わない。
だって一緒のものを見れてるってだけでドキドキするというか、ワクワクするというか、とにかく浮かれてしまう。
佐久間は何にするのかな。


「俺このランチセットにしよ。」
「じゃあ俺はこっち。」


決まったらまた顔の距離が戻っちゃって、それがなんだか勿体ないとか、佐久間の一挙手一投足に浮かれたりいじけたり、今日も今日とて忙しい。
注文を済ませたらお水を一口飲んで自分を落ち着かせようと努める。


「佐久間は午前中何してたの？
アニメ？」
「いや、ゲーム。
雑草抜きしてた。」
「え、じゃあ同じのやってるね。」


島つくるやつだ。
思わぬところで見つけた共通点に、またやたらと嬉しくなる。


「まじ？」
「うん。」
「じゃあ島遊びに行き合ったり出来んじゃん。」


そっからは佐久間の島にトイレが並んでる話しとか。
あとはインクのゲームもお互いやってることが分かった。


「じゃあ今度は俺んちでゲームしよ。」
「え、通信で出来るじゃん。」


家に呼んでくれるのは嬉しいけど、別にいつからだって一緒に出来るよ。
それこそ、今日からでも。


「通信もするけど一緒にやんのも楽しいじゃん。
アニメも全部は見れてないし。
だからまた俺んち来るでしょ？」


そんな決定事項みたいに言われたらなんだかくすぐったいよ。
返事は勿論


「うん、じゃあ次はゲーム持ってお邪魔する。」
「ん、決まり。
阿部ちゃんいつ空いてんの。」


そうやってみるみる増えていく約束が嬉しい。
友達の振り、ちゃんとしとくから。
これからもこうやって一緒に過ごしてよ。

家族で共有しているカレンダーアプリを開き、佐久間と決めた日にちをタップする。
そうしたら佐久間から


「泊まってくっしょ？」


とこれまた決定事項のように告げられたから、友達の家に泊まりと入力した。

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