褪色する春＿skab

１３ ページ18

あまりの衝撃に思考が情報処理を停止したことだけはなんとなく分かった。
えーっと、えーっと。


「ああ、阿部ちゃんこの前酔ってたし俺先起きたから覚えてないのか。
この前ベッドで並んで寝たの。
だからサイズの心配は無し。」


並んで、寝た。
俺と、佐久間が？
辛うじてその情報だけ脳が取り込んだ。


「で、どうする？」
「あー、て、まえで…。」


壁と佐久間に挟まれたら、色々な意味で俺がショートしそうだから、せめてもの解放を求めて手前を選ぶ。

佐久間の家はワンルームで、テレビとローテーブルとベッドは一直線に並んでる。
だからベッドはもうすぐそこと言うか真後ろにあって、早速佐久間が奥に入る。


「はい、どうぞ。」


そんなこと言ってベッドで待たれると、ですね。
心臓が寝るために何個必要なのかなとか計算を始めちゃいそうなんですけど。


「お邪魔します。」


もそりと佐久間の隣に寝転がる。
ねえ、つい向かい合っちゃって、顔、めちゃくちゃ近い。
なのにそんな至近距離のまま


「んはっ、何それ。
じゃあ、いらっしゃい。」


なんて笑顔向けられたら。
ああ、これぞ陥落。
もう無理。
ねえこれ、手はどこに置いたらいい。
目なんてこんな近かったら、三秒もあわせていられないよ。
でも佐久間の方を向いたままで良い？
仰向けに直した方が良いのかな。
ああ、どうしようが有りすぎて、でももうここから出たいとも思えない。


「今日はいっぱい阿部ちゃんのこと付き合わせちゃってごめんね。
ちゃんと話すのなんてまだ二回目なのに、阿部ちゃんといるとすげぇ楽しくてさ。
ついテンション上がっちゃった。」


俺もね、テンションとかじゃないけど、なんて言うんだろう。
ドキドキが、止まらないよ。
それは、引かれちゃうから言えないけど。


「俺も楽しかった。
佐久間と過ごすの。」


そう言ったら、またあの満足げに目を細める笑みを向けられた。
それから


「良かった。」


って。
きっと良かったって思う気持ちは俺の方が何百倍も大きいと思うけど。
でも佐久間にもそう思ってもらえたなら、それはさらに何万倍にも膨れ上がっていくよ。


「じゃあ電気消すね。
おやすみ。」
「おやすみなさい。」


辺りが真っ暗になって目を閉じた。
なんだか心がポカポカして、すごく良い夢が見られそうだと思った。
佐久間も、そうだったら良いな。

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