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HappyBirthday3 ページ6

*


「……ああ、」

「もう。ああってなによ」


くすくす笑うA。

 すまない、こういうのは苦手なんだ。そういうと「まあいいけど」と返ってきた。


なんとなく、ぐるりと部屋を見回すとテーブルに目が入った。細かく言えば、テーブルに置いてある少し不恰好なケーキ。


「…A、これは…?」

「……あ。…………ケーキです」

「それは分かっている。貴殿が作ったのか?」


途端に歯切れの悪くなるA。
性格が悪いと重々承知しているが、こういうAは可愛いと思う。少し、いじめたくなってしまう。


「……そうです。…わたし、自炊…っていうか料理できないから。料理本とかネットとかで調べて作ったの。でもやっぱ見た目も良くないし、理鶯より上手くないから捨て、」


ああやっぱり。いじめるなんて出来やしない。
俯きがちにしゃべるAを思わず抱き締めた。



ああ、そういうことか。やっと分かった。
やっと、実感した。


「小官のために作ってくれたのだろう?ならちゃんと味わいたい」


これが、愛しい。


「…いきなり抱き着かないで、」

「好きだ」

「っへ、」

「好きだ、A。愛してる」


そんな言葉が喉へと押し寄せては止まらずに溢れる。愛しい。目の前の彼女が。


「もう、分かったから…離して」

「…あ、そうだ。A、これを」


舞い上がって忘れていたがふと思い出して胸ポケットから先ほど摘んできた花を差し出す。Aはそれを受け取ってくれた。


「花?」

「綺麗だろう、Aにそっくりだ。たくさん咲いていてな。今度共に見に行こう」


胸板にこてん、と頭をぶつけられた。離れろ、と言ったくせにAはぎゅうぎゅう、と小官に抱き着く。

堪らなく愛らしい。心臓が締め付けられる。


「…ありがとう。理鶯、だいすき」

「小官もだ」

「理鶯しか見えない、ずっとすき。おめでと」


それでいてくれなければ困る。Aはずっと小官だけを見てればいい。

そんな言葉を飲み込んでAを抱き締め返す。


誕生日というものは、Aという愛しい人間がいるとこんなにも素晴らしい。



-

0621
happy birthday‼

よん→←HappyBirthday2



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LOKO - ずっと探してました!素晴らしい作品をありがとうございます (2021年6月12日 13時) (レス) id: 2cf4de4ba9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごく面白かったです。甘々で、凄く好きな作品でした!もう更新はしないのでしょうか?とても好きになってしまった作品なので少し悲しいです。待ってます。 (2019年9月3日 7時) (レス) id: 1bc282c048 (このIDを非表示/違反報告)
涙香 - まずありがとうございます!!←理鶯は天然だけど何処か色気があって雄みがあるんですよね…!!それが匠の様に表現されていて本当に悶えました←本当にこの作品大好きです…! (2018年11月26日 1時) (レス) id: b0edcd9996 (このIDを非表示/違反報告)
タピオカ(プロフ) - 理鶯って天然って云うか鈍感なところあって、いいですよね!更新頑張ってください (2018年7月17日 2時) (レス) id: df53b8b7ae (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最高です……( ゚∀゚)・;’.、グハッ!! (2018年6月27日 9時) (レス) id: d9386c92f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いさ | 作成日時:2018年6月14日 19時

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