主導権はどちら？【毒島メイソン理鶯】

HappyBirthday ページ4

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(無事お付き合い後という設定でお読みください)



なにも、手に付かない。
獲物を捕らえようにも他の思考が邪魔してうまくいかない。らしくない。


『今日は森行ってて。夜ごろまで帰ってきちゃだめだからね。帰ってきても家入れないから』


そうAに言われたのが昼。…そして今は夕方過ぎだろうか。

家に入れないと言われたときは流石の小官でも焦りを隠せなかった。何かしただろうか、と聞いてもAは顔を赤くして『ちがう、してない。…とりあえず、帰ってきちゃだめだから。…言うこと聞いて』と言うだけ。

けれどAがそう言うなら小官はそれに頷く。

だからこうして森に出てきた。
しかしAのことを考えてしまい、いつもの瞬発力は完全に落ちしてしまってるから狩りどころではない。

どうしたものか、と考えていると不意に地面に目を落とした。


「…花、」


見つけたのは綺麗で儚そうな花。
周辺を見るとぱらぱらと同じような花がいくつも咲いていた。

しゃがみ込んでじ、とその花を見る。小さいのに、美しく育っていてまるでAのようだ。


見せてやりたい。


一度そう思ったらその思考は変わらず、悪いと思ったが、その花を一輪だけ摘んだ。


これを手土産にすればAは喜んでくれるだろうか。アイツには劣るが綺麗な花だ。きっと、Aに似合う。

自然と頬が緩む。


「…そろそろ戻るとするか」

本来の住処であったこの森よりも、Aの家に帰りたいと思ってしまうあたり、だいぶ彼女に依存してしまっている。
けれどこう依存してしまってるのが自分だけでないことくらい、とっくに気付いている。

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