BREAKDRIVE 2【オリジナル小説】 (ページ7)

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56話ページ7

岳斗side

「運転手っ！この声が聞こえたらもう少しだけスピードを上げてくれ！！」

「くそっ……くそっ……！なんだって俺がこんな目に会わなきゃなんねぇんだ……！！」

俺の声が届いたのか、トラックのスピードは段々速くなっていき、車の間を右往左往としながら通っていく。

「へへっ、上出来っ……！」

もうあの時みたいな、なんの力もなくて無力なままの俺じゃねぇ。
ビクビク怯えることしか出来なかった俺じゃねぇ。
今の俺には助けるための力がある。
誰かが助けに来るのを待つくらいなら……

俺が、あの子を助ける！！

両手でしっかりとフレアスブレイドを握り締め、右足を後ろに回す。
腰を落として魔隆の残していく足跡のリクトルを凝視し、深く息を吐き、荷台から飛び移るタイミングを見計らう。

そして、トラックと歩行者側の一つ建物がすれ違う時、屋根に魔隆の足跡が現れるのを見つけた。

「今だっ！！」

足跡を残した瞬間を見過ごす事なく、瞬く間に荷台を強く蹴り、魔隆が居ると思われる屋根に向かって高く飛び上がる。
その道を通る通行人の人達も、トラックを運転していた男も、そこにいた人達の大半が俺に視線を向けていた。

浮遊感を身に感じながら、俺はフレアスブレイドを背中に、ただ屋根の一点だけを見つめていた。

「燃え滾れ……俺の魂っ！！！」

自分を鼓舞するようにそう叫びながら、重力に身を任せ、屋根に足を着くと同時に、背中にあったフレアスブレイドを視線の先にあるものに向かって大きく振り下ろした。

すると、何もない空間から突然噴水のように黒いリクトルが吹き出し、身体を斬られた魔隆はステルス能力を解き、姿を現した。

「ガッ……グギャッ……！！」

「相手が悪かったな、魔隆。俺には普通じゃ見えねぇようなリクトルだって、見る事が出来んだよ！！」

大ダメージを負った魔隆は、痛みで女の子を離してしまう。

「あっ……！」

突然離された女の子は、足を滑らせて頭から真っ逆さまに落ちそうになるが、間一髪のとこで女の子の腕を掴み、俺の方へと体を引き寄せる。

「もう大丈夫だ、よく頑張ったな」

泣いている女の子の頭を優しく撫でる。

魔隆に追いつく事が出来たのは、魔隆の足跡があっただけではなかった。
リクトルを見ようと必死に凝らしていると、薄ピンク色の小さなリクトルが見え、抗おうと魔隆の腕の中でバタバタと暴れていたのだ。
そのお陰で魔隆もスピードが落ち、俺も魔隆に追いつく事が出来た。