55話 ページ6
岳斗side
静止をかける疾風の声を聞き流し、力強くジャンプする。荷台に右手をかけ、滑らないように力強く掴み、膝を曲げる。左腕を荷台の上に乗っけ、体を引き寄せながら右足も乗せ、なんとか荷台の上へと乗った。
「ふぅ……猛特訓を怠ってなくてよかったぜ……」
俺は通行人の人達の方を向き、疾風に視線を向ける。
「悪りぃな疾風！ 身勝手な事すんのが俺のやり方なんでな！！ おい運転手！ トラックを出せ！！ 」
「俺は知らねぇ……俺は知らねぇからな！！ 」
勢いよくアクセルを踏むと、エンジンがかかり、トラックはガードレールから離れ、道路を真っ直ぐに突き進む。
猛スピードを出してる為、荷台にいる俺をものすごい風圧が襲う。
風で飛ばされないように、必死に荷台にしがみつきながら、飛び移っている魔隆を追う。
「このスピードなら追いつく……！！ 」
俺は集中するように目を閉じ、風を全身に感じながらも、飛ばされないように力を入れていた。
思い出せ……あの時、おっさんが教えてくれたことを……！
『良いかお前ら、レイヴンを出す時のコツは、自分の中にある『ギア』を感じる事だ。
ギアってのはそれぞれのリクトルに宿っているエレメント、つまり己の力を引き出すための歯車だ。
精神を研ぎ澄ませ、身体の隅から隅までリクトルを感じる事に全集中し、一瞬でも余計な雑念は捨て、歯車をかち合わせるようにリクトルを体全身に巡らせることに集中しろ。
そうする事で自分の内に秘めたギアを感じる事ができ、リクトルを身体の内側から出し、初めてリクトルを具現化させてレイヴンを出す事が出来る。
つまりは集中力を途切らせるなって事だ』
「リクトルとギアの歯車を合わせる……」
ひたすら俺は集中した。
風の感覚も、風を切る音も、荷台から感じるトラックの振動も、全ての情報を遮断させ、ただ俺はリクトルを感じる事に集中した。
リクトルを身体全身に巡らせる様に集中していると、一瞬だけ炎が身体の内部から俺を燃やしつくすような感覚を感じる。
その一瞬を逃さず、右腕を前に出し、目を見開く。
そして、俺は自分のレイヴンの名を叫んだ。
「来いっ！ フレアスブレイド！！」
すると、目の前に赤い光が現れ、その赤い光を掴むと、光は形を変えていき、 赤い大剣となる。
すげぇ……リクトルが体全体に回ってんのがわかる。それに、なんだか身体が軽くなったみたいだ。これなら行ける！！
「待ってろ、今助けるからな！！」
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