93話 ページ44
岳斗side
「それで、その真珠がどうしたんでござるか？」
「あぁ……こいつを科学班に解析してもらったところ、これは遠隔操作チップなのがわかった。だが、こいつは人工的に造られたものじゃねぇ。そうだよな？ 月見」
おっさんは月見に視線を向けてそう問いかけると、月見は何食わぬ表情で真珠の方を見た。
「……その真珠は、魔隆が創り出した物。魔従達の手に埋め込まれたあの宝石と同じ物と思われるわ」
「魔隆が……創り出した……？ 」
にわかには信じられなかった。魔隆の手によって作られた物だとは考えられなかった。
魔隆に知能があるとしても、せいぜい12歳ぐらいまでの知能、人間の知能には明らかに劣るはずだ。
「疑うのも無理はないと思うわ、こんなのを創り出す魔隆なんて私も聞いたことがない。でも……そうとしか言いようが無いの。岳斗、貴方ならわかるはずよ。なぜそう言い切れるかが」
月見は机にある赤い真珠が入った袋を手に取ると、それを俺に渡した。何のことなのかわからないまま、渡された物を受け取り、俺は中に入った真珠を見る。
「一体お前は何言って____」
真珠を見た瞬間、赤い真珠から禍々しい黒いリクトルが見え、真珠からは瞼を閉じたあの目が現れた。
「っ……！？ こいつは……！！ 」
すると、俺が見ているのに気づいたかのように目を見開き、黒いリクトルは無数の手になり、引き摺り込むように手を俺に伸ばして身体中を掴んだ。
「っ……！ うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああ！！！！！ 」
驚いた俺は咄嗟に真珠を投げた。
「お、お兄ちゃん！？ 」
「ちょ、ちょっと、あんた急にどうしたのよ！！ 」
顔から冷や汗を出し、鼻息を荒くさせながら自分の首を触る。
「今のは……幻……？ 」
だが、確かに触られた感触はあった。
真珠の中へと誘うように力強く俺を引っ張った。幻にしては、とてもリアルな物だった。
「岳斗、貴方が見たあの目と魔従達が異界の扉を開ける時に現れたあの大きな目……魔隆が深く関わってるのがわかったでしょ？ 」
「本当に……これを魔隆が……」
これを創り出した魔隆は今までの魔隆なんかより知能がある。B級やA級なんてものじゃ無い……最高ランクのS級と渡り合える実力がある。
「もしかすると俺達は……とんでもない奴らに目を付けられたのかもしれねぇ……！ 」
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