63話 ページ14
岳斗side
「んで？ 話ってなんだよ」
「これ、あなたに渡し忘れてたらしくて」
月見はジャージのポケットから小さなバングルの様なものを取り出し、俺に手渡した。
「なんだこれ？ 腕輪？ 」
「それはブレイダー全員に渡される通信バングル。それで他の応援を呼んだり、チームメイトと話す事ができる。任務を知らせたりもするから、肌身離さず身に付けておいて」
通信バングル……確か、俺以外の真冬達も持ってたな。疾風が先にスタスタと行っちまったから、俺だけ渡し忘れてたのか。
月見に渡された通信バングルを右手首に付け、右手を天井に向けながら鑑賞する。
「通信バングルかー……なんだか世の中ハイテクになってくるもんなんだな」
ジッと通信バングルを見ていると、ふと月見に聞きたいことを思い出し、月見の方へ目線を向ける。
「なぁ、月見。前から聞きたかったんだけどよ……お前、男が苦手なはずなのに、なんで俺は平気なんだ？ 」
月見は一瞬ピクッとなるが、表情一つ変えずに俺を見る。
「……知りたいの？ 」
さっきと同じような表情なのに、何故だか視線が冷たく感じ、まずい事を聞いてしまったんじゃないかと、少し焦り出す。
「い、いや……なんというか……ただの興味本位っつーかさ。お前ってなんだか謎めいてるっていうか……お前の事、少しでも知れたらって……」
照れ臭そうに明後日の方向を見ながらそう言うと、月見は何も言わずに顔を伏せる。
そこから更に気まずくなっていき、沈黙はしばらく続いていた。
やべぇ……月見を怒らせちまったか？
真冬に「女心を知らなさすぎっ！ 」て怒られるのも無理ねぇな……これからどうするよ、俺……
「……岳斗」
「はっ、はいっ！ なんですかっ！ 」
急に名前を呼ばれ、驚いて敬語で返事をしてしまった。
「今はまだ言えない。でも、その時が来たら、貴方にちゃんと話す。だからそれまで待っててくれない？ 」
月見は顔を上げてさっきと変わらない表情で俺にそう言う。
だけども、俺には月見が、とても悲しくて寂しそうに見えた。
「月見……」
「……時間を取ってしまってごめんなさい。それじゃ」
俺の横を通り過ぎて行き、部屋から出ようとした所で足を止めた。
「……岳斗、私が貴方を守るから。貴方を絶対に、死なせないから」
「え……？ おい、それどういう____」
バッと出口の方を振り返るが、月見はもうそこには居なかった。
「……なんなんだよ、あいつ」
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