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「マルゲリータ、ポテト、アップルパイ。」
「好きだったじゃん?」
そう、好きだった。どれも全て、今でも好き。
蘭くんは記憶力がいい。
出会った当時から不良だったことは知っている。うろ覚えだけどその頃の有名な不良の人達とつるんでいたことも聞いたことがある。
それが12年の時を経て、不良なんて言葉が可愛く思えるくらいとんでもない人になっていた。
喧嘩だけじゃなくて頭も良い。だから今、警察でも捕まえる事が難しい犯罪組織の幹部を務めているのだろう。
褒めていいことなのかは置いといて、凄いとは思う。
昔からどこまでも悪い人で、そんな悪い人を愛してしまった私もまた悪い人なのかもしれない。
「久しぶりに食ったけどうめぇな。」
「美味しい。」
こうしてまた、二人で向かい合ってご飯を食べる日が来るなんて。
他愛もない話をしながら同じご飯を食べて、美味しいと笑い合う。
当たり前に過ごしてきたそれはとても幸せなことだったんだって気付いたのは、蘭くんと離れてから一人でご飯を食べた時だった。
「どうした?」
「美味しいね、楽しいね。」
ずっと、こうしたかった。二度とこんな風になれないと思い込んで一人で生きてきた。
懐かしさが全身を駆け巡り、あの頃を思い出させてじわじわと涙が込み上げる。
夢みたいだけど、現実なんだ。
「泣きそうじゃん。大丈夫か?」
「また一緒にご飯食べれるの、嬉しいなって。」
自分勝手な事を言っている自覚はある。
勝手に別れを告げて家を飛び出しておいて、また一緒になりたかったなんてどこまでも身勝手が過ぎる。
だって、仕方がないじゃない。
嫌われたと、もう別れたいのだと、そう思ってしまったのだから。
本当のことを知る勇気がなくて、何も聞けないまま終わりにしようと一人になることを選んだ。
そう、本当のことを私は未だに知らずにいる。
12年前の2月22日に何があったのか、蘭くんは何を思っていたのか、私は何も知らない。
聞く勇気も、受け入れる勇気も、今はまだ足りない。
12年経った今でも蘭くんは私を愛していると言った。何度も、何度も。
大事そうに扱ってくれる優しい手つきに優しい目、優しい声。それが全て嘘ではないと信じたい。
どんな悪人になっても、どんなにその手を汚そうとも、私の前ではいつだって正直で本物でいてほしい。
そうしてくれたら、蘭くんの全てを受け入れてみせる。これを最後の恋にしたいから。
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れん(プロフ) - まゆさん» まゆさま、コメントありがとうございます!お褒めの言葉、とても嬉しく思います!「一生幸せ」も読んでくださってありがとうございます☺️全然系統が違うのに一気読みしていただけて嬉しいです!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります✨ (3月18日 19時) (レス) @page23 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 初コメ失礼致します。お話が面白くメチャクチャ引き込まれてしまい、気づいたら一気に読んでしまいました!あと実は、れん様の他の蘭君のお話しも一気に読ませていただきました!どれも最高に良かったです!!更新頑張ってくださいね。応援しています。 (3月18日 8時) (レス) @page23 id: e4a4033c2e (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - とわさん» とわさま、コメントありがとうございます!沢山の蘭くんの小説の中からこちらを見つけてくださって嬉しい限りです!貴重なお時間を使って読んでいただいている分、面白かったと思ってもらえるようなお話に出来るよう頑張ります☺️ (3月16日 1時) (レス) @page21 id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
とわ - 蘭くんの小説探してたらみつけたんで読ませていただいてます!めっちゃいいっすね…まじ好きな感じできてて… これからも読ませていただきます!応援してます!頑張ってください! (3月15日 3時) (レス) @page21 id: 8407209a34 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - kizunaさん» kizunaさま、コメントありがとうございます!こちらのお話にも遊びに来てくださって本当に嬉しいです☺️更新頑張りますので、またお暇な時に読んでいただけたら幸いです…! (2月23日 21時) (レス) id: 160e1714c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2024年2月23日 0時