Prisonerworld【小説】 (ページ11)

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奪わないでくれ【守】【夕凪蝶葉】ページ11

私を繋いでいる彼女を彼女がぴんと張り、愉しそうに弄ぶ。

やだ、奏。覚えてないのかな。

「10、9、8、」

「蝶葉!!…夕凪蝶葉…だから…っ」

寒さか恐怖か、それとも怒りか。
感じたことのない得体の知れない感情が私を黒く染めていく。こんなの知らない。彼女は…奏はこんな人だった？

彼女は何かを思い出すような、それでいて何かを懐かしむ様な顔をして、しばらくして微笑む。

わからない。考えたくない。何も思い出したくない。

「よく言えました！…それでは…貴女は何故この世界に残りたいのですか？」

私を救った笑みが今は私を痛めつける。
汗が伝う。思い出してしまう。嫌だ。思い出したくない。

「ほらほら！答えないと！」

糸にはさみをかけようとする。
先程いじっていた糸とは違う別の糸。
プツンと糸が切れると右肩から右腕にかけて激痛が走る。

「っうﾞ…！」

「ちゃんと答えないと次は左腕ですよ？」

右腕が動かない。神経が切られた。
血がボタボタと流れ落ちる。
キリキリと糸を張り、彼女は笑っている。そして、いとおしそうに私の頬に手を添え微笑む。

「その顔、美しいなぁ…ずーっと見ていたい…」

絶望と恐怖が体を支配する。
涙が頬を伝う。彼女はこんな人だっただろうか。わからない。

糸がキリキリと音をたてる。
もうわかんない。考えたくない。

「…居場所なんてなかったから」

ボソリと震える声で呟いた。もう何もわからない。目から光が消え失せていく。

私は考えを停止した。