【忍たま】私に、確かに刻んで【善法寺伊作】

ただいま ページ30

you side



『食満くんは、仕事落ち着いてるの？』




夕方、食満くんと散歩中。




食満「うん、またじきに忙しくなるけど」




皆、頑張ってるんだなぁ。

伊作くんの同級生とは何度か会っているけれど、
それぞれの道で頑張っていて。
そして何より仲良しで、羨ましい。




『で、随分と遠回りしてるけど……』



食満「えっ、あ、いや！深い意味はないよ。
　 ……仕事がこんなに早く終わるとは……」



『え？』




ごにょごにょと話す声が
うまく聞き取れなくて聞き返したけれど、
食満くんは何でもないよ、だって。



なんだか変な食満くん。




食満「そ、そういえばさ。
　 伊作……いつ帰ってくるんだろうな」



『どうだろう……一週間前に手紙は来たけどね』




早く伊作くんの優しさに、触れたい。




◆◇



食満「散歩、付き合ってくれてありがとう」



『とんでもない。荷物ごめんね』




もうあたりは薄暗くなっていて、
私と食満くんはようやっと我が家の玄関先まで
帰ってきた。




『夕食作るから、食べていってね』




私の後ろに立つ食満くんに話しながら、
板戸に手を掛ける。


もう家の中は暗いだろうから、
まず灯りをつけなくちゃ……




がらり




そう思いながら板戸を開けると。







「おかえり！Aちゃん！！」






薄暗い家の中から、
にゅっと手が出てきて私の腕を掴む。




『きゃ……！』




そうして私をぐっと引き寄せて
抱きしめたのは




伊作「ただいま。帰ったよ」




相変わらず、
ふんわりとした桃色の雰囲気をまとう、伊作くんだ。




『い、伊作くん！帰ってきてたの……？！』



伊作「うん、さっきね」




薄暗い中でもわかる、
ふわふわと微笑む伊作くんの顔。


じんわりと、私の心に沁みていく。




伊作「帰るのが遅くなってごめん。
　 色々と悩んじゃって、」



『悩んで？』



伊作「そうそう………よいしょ」




伊作くんは私を抱きしめたまま、
片方の手で土間に明かりを灯した。



やっとはっきり見えた、お互いの顔。




伊作「ねぇ、Aちゃん」



『なぁに？』




伊作くんはその温かい手で
私の両手を包み込む。









伊作「僕と、結婚してください」

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