【忍たま】私に、確かに刻んで【善法寺伊作】

胸騒ぎ ページ18

伊作side



繋いでいたAちゃんの手を、
ぎゅっと両手で包み込む。




伊作「いってらっしゃい。また迎えに来るからね」



『ありがとう。いってきます』




Aちゃんを仕事先である茶店に送り届け、
僕は一旦家に帰ろうと回れ右をした。



だけど、どうしてだろう。



この変な、




伊作「……胸騒ぎ」




僕は妙な不安を感じて、更に回れ右をした。



何かわからないけれど、
Aちゃんが心配になって茶店に戻った。

気付かれないように中を覗くと、
Aちゃんはさっそくいつもの笑顔で
接客を始めている。




大丈夫かな……だけど。




僕はどうしても帰る気になれず、
近くに潜むことにした。



何度か店の中を覗きに出たり、辺りを見回したり、
とにかく警戒し続けた。


何もなければそれで良い。





結局時間は過ぎて、もうそろそろAちゃんの仕事の終わる時間も近くなった頃。






嫌な予感とは、当たるものだ。








『あのっ、』



男「おいおい、なに湯呑みを
　 ひっくり返してくれてるんだ。
　 おかげで見ろ、びしょ濡れじゃねぇか」



『それ、貴方がやったんでしょう！
　私の腕を急に引っ張って』




下品そうな男の声と、
Aちゃんの声が外にまで響いた。



急いで店先まで走り、中を覗く。




男「あぁ、可愛らしい娘だと思ってな。
　 お前の手が当たって、湯呑みが
　 ひっくり返ったんだ。お前のせいだろう」




聞いていれば、なんという言いがかりだ。
ていうか、Aちゃんに触るな。




男「さて、一緒に来てもらおうか。
　 たっぷり"お詫び"をしてもらわないとな」



『いやっ……』





もうじっと見ていられない。
僕だって怒る。






身体は動き出していた。

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