昼想い、夜夢む渇き�� ページ31
「挽回のチャンスなんだよ」
そう言って両手をきつく結ぶAは、鬼気迫る何かがあった。
こんなに熱量あったかこいつ。
高校に着いて、それぞれが点数開示を受ける。
先に俺が聞いて下駄箱付近で待っていたら、ふらふらとAが帰ってきた。
「Aどう…」
見慣れない校舎から出てくる、見慣れた制服姿のAの足取りは重い。
その様子を見りゃ一目瞭然だ。
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
Aは固く口を閉ざしたまま、ゆっくり歩き始めた。
その隣を無言で歩いていたら、いつもの河原に差し掛かったころ、ようやくAが口を開いた。
「7点…足りなかった」
聞く奴にとっちゃ反感を買うだろう台詞を吐いて、足を止める。
俺も合わせて歩みを止めれば、ぽたりと地面に雫が落ちたのが見えて、思わずギョッとした。
「もうだめだ…入試が最大のチャンスだったのに」
涙声で、その場にしゃがみ込んだAに合わせて、俺も姿勢を低くする。
本気で悔しがってると思ったが、その泣き顔を見た時なにかが違うと思った。
「ごめん、ごめん千空。いっぱい教えてくれたのに、数学と理科満点じゃなかった」
帰りたくないと嗚咽の合間に小さく呟くAにどうすることも出来ず、とりあえず道端から土手を降りるよう手を引いて、何度となく訪れた河原に並んで腰を下ろした。
皮肉なくらい鮮やかに晴れた空の下で、鼻をすする音だけ聞こえてくる。
「満点じゃなきゃ死ぬのか」
嗚咽が収まってきた頃を見計らって、ゆっくり話しかける。
お優しい慰めや、回りくどい言い方は得意じゃねえ。
思うままに言葉にすれば、Aは少し戸惑ったあと首を振った。
「国語は何点だった？」
「…100点」
「英語は？」
「…100点」
「社会」
「……130点」
最後の社会の点数を聞いて、俺の口角があがる。
「ククク。ならいいじゃねえか。トータル523点だ、余裕で満点超えてる」
「こんな採点、絶対おかしいよ。それに私は理科と数学で満点が取りたくて…」
「俺は理科150点だった」
しれっと言えば、Aがようやく顔を上げて俺を見た。
濡れた黒曜石がまんまるに見開いている。
「それに俺と出会いたての頃の点数思い出せ。理科85点、算数」
「あああまってまって」
慌てるこいつの目からはもう涙が引いていた。
親指で目じりに残る涙を拭ってやれば、くすぐったそうに身をよじるA。
「頑張ったじゃねえか。それじゃだめなのか」
頬に手を当てたまま、真っ直ぐ黒曜石を見た。
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sora(プロフ) - キャンディさん» 書き込みありがとうございます。アニメとはまた少し違う解釈ですが、私なりにDr.STONEを描いているので面白いと言っていただけて嬉しいです。まだまだ長い物語ですので、気長に読んでいただけると幸いです。よろしくお願いします。 (11月2日 9時) (
レス) id: 90b12c249d (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ(プロフ) - アニメ3期の後読みに来ました！面白いです！！面白すぎて一気読みしてしまった (10月28日 12時) (レス) @page26 id: 467824b5e4 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - バレーボールさん» 書き込みありがとうございます。お返事が遅くなり大変申し訳ありません。アニメより原作沿いで書いていましたので、少し噛み合わないところもあったかと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございます。アニメ3期の後にでも続きを読みに来てください。 (2022年6月1日 9時) (レス) id: a1dae06abc (このIDを非表示/違反報告)
バレーボール - アニメでストーリーを見るのと平行してここまで読ませて頂きました。原作のストーリーとキャラクターのイメージを壊さない物語構成と文才に感動しました。こんなに素晴らしい作品を読ませて頂けて光栄です。ありがとうございました。 (2022年3月30日 15時) (レス) @page8 id: d448fd1791 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - スズさん» 書き込みありがとうございます。徹夜は体に悪いので程々にされてくださいね。アインシュタインの手紙は、私も初めて知った時はっとしました。Dr.STONEの根幹にあるといいなと勝手に思っています。完結までもう少しありますので、最後まで読んでいただけると幸いです。 (2021年5月15日 10時) (レス) id: 245919ea47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2020年1月12日 14時
