零くん、あのね！ La fin (降谷零/安室透)

Anniversaire ページ44

これが、あの時の夢と一緒なら..

そろそろ、出る筈...



「ほら、透っ！カッコいい踏み台を買ったんだ。」



真新しい踏み台がある、洗面所の方角を指差す零君。


「かっこいい？？」

「あぁ、透の大好きな新幹線だぞ？」


やっぱり出たっ！

必殺、物で釣る作戦。
零君の常套手段。



あの日、見た夢..
こんな形でまたお目にかかれるなんて――



素直に従う透ちゃん。

「よしっ！いい子だ。透はいいお兄ちゃんになるな。」

「おにーちゃん、なるう！」


その意味は、恐らくまだ分かって無いだろう。
だけど、きゃっきゃっと、嬉しさ全開で零君パパと洗面所へと姿を消す。

透ちゃんも子供なりに、泣いたり笑ったりとにかく毎日忙しいのだ。



..



「透、お誕生日おめでとう！」

「ぱぁぱ！」

本当は先週がお誕生日。
でも、中々自宅に帰れなかった零君の事もあり
今日がお誕生日会だ。
ささやかだけれど、零君と私なりに透ちゃんを
お祝いしたいの。



「良かったね！パパが作ってくれたんだよ。」

「おおきいぃ！」


大きなお誕生日ケーキを前に、はしゃぐ透ちゃん。

子供用の椅子に座ったまま、上半身だけで謎の動きを始める。今はきっとご機嫌モード全開だ。



普段あまり飲めないジュースにも喜びを隠し切れない。私が虫歯を恐れてあまり与えないから。



「透ちゃん、美味しい？」

「うん、おいしー！」

小さなお口なのに、スプーンに沢山のクリーム
を乗せたケーキを運ぼうとする。
完全にキャパオーバー。

「おい、透、そんなに慌てなくてもケーキとジュースは逃げないぞ。」



案の定、小さなお口とおててはクリームで
べたべただ。

「ほぉら、言わんこっちゃない。友達に笑われるぞ？」

「んんっ..」

透ちゃんのほっぺについたクリームを
ウェットティッシュでサッと拭き取る。
慣れた手つきで甲斐甲斐しく世話をやく零君。



嬉しい..
まさかまた、あの時の..夢の続きが見れるなんて。
そう、これは正にその続きだ――


あっ、ちょっと違うのは、購入したケーキじゃなくて、旦那様のお手製な所かな？

零君のケーキはピカいちなの。



「おい、Aっ、ついてるぞ？」

「えっ！や、やだっ、どこ？」



何やってるんだよ、と言わんばかりの
その意地悪そうな笑み。

それ..いちいち格好良くて困るんです。



「ここだよ、」

「んんっ..」



不覚にもふわりと唇を重ねられた！
と理解する頃には、彼が私の唇に付着してた
クリームを舐めた後だった。

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