零くん、あのね！ La fin (降谷零/安室透)

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あの日？

零君は息子を連れて
2人で出て行ってしまった。
縋ろうとする私を残して...





良かった..
やっと帰って来てくれた！





ずっと、

ずっと...

待っていたんだよ――




もう、

1人にしないでよね？






それは、あたたかくて..

私には、眩し過ぎる程の情景だった。








..







それから、私はあても無く歩いていた。
いつから歩いていたかも、もう分からない。
何処に向かえばいいのか途方に暮れていたのだ。





..





あっ、

ずっと続く暗闇の果てに、

一筋の光が差す方へ足を早める。




「...っ！」





聞こえる..

はっきりと。





「Aっ、」


零君！！





気がつけば夢中で走っていた。
貴方の声がする方へ..









..









「Aっ、A？」

「...んっ」




何故か身動き出来ない身体を不思議に
思いながらも、視界の隅に強く感じる彼の気配。

ここは..何処？




「A、俺が分かるか？」




今度は、はっきりと貴方のその美しく
整った顔を認識する。見間違える訳がない。



零君！
良かった..
貴方の帰りを待っていたんだよ？




「れい..くん、おか..えり...」

「あぁ、A。」



あれ？零君、
どうしてそんな顔をしているの？
さっきまで、あんなに笑顔だったのに..



「まっ..てた..よ、」

「あぁ、ただいま。」



どうして？
そんなに..
泣きそうな顔をしているの？

だって―――



「2人で..あの子の、おたんじょうび..」

「あぁ、」

「いわっ..た..んだよ？」

「そうだな。...そう..だっ..たな。」




「Aっ、」




初めて見たのだ。
貴方が自身でその雫を拭う姿なんて。


零君、

泣かないで？


「れ...くん..」






..







ぼんやりと、目を開くA。
その瞬間、言いようの無い安堵感に包まれる。

あの子？
お誕生日？
夢でも見ていたのだろうか――



全く時計も携帯も見向きもしなかった。
時間を忘れ、ただただAが眠る様を
見守り続けた。どの位、そうしていたかなんて分からない。



ガラガラ..

戸を引く音。
退室した筈の看護師が戻って来た。





「降谷さん、」

「はい、もう出ます。どうか..宜しくお願い致します。」




軽く一礼をし、もう一度だけベッドの手すりを掴んで、彼女の寝顔を覗き込む。



「A、また来るよ。絶対に..」


だから、もう..
俺の前から、消えようとするなよ？




Aが起きないよう、そっと..そっと
その場を後にした。

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