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「失礼っ、」
と短く言葉を発した後、掴んだ手首を離す事なく
そのまま歩み始める。
けれどこの状況を降谷に見られたら、お小言の一つや二つ言われかねないが、致し方無い。
「か、風見さんっ!ど、何処に行くんですか?」
「いいから、今は私について来て下さい。荷物は我々が運びますから。」
「で、でもっ、まだ手荷物検査がっ。」
「パリ行き遅延してるのでしょう?それに、今日は...もうその必要はありませんから。」
「えぇ、どう言う意味ですか?パリ行きの便...
今日はもう飛ばないんですか??」
風見は、Aの質問に対して足を止める事は無い。
ひたすら前へ前へと突き進む。
あの人の元まで、絶対に送りとどけるという
使命感を強く抱きながら――
でも振り返りAと目が合うと、無言のまま眉を下げる事で応えたつもりでいた。
風見とAの後にぞろぞろと続く降谷の部下達。
その表情は、皆どこか明るい。
...なのにこの不可解な状況を、1人だけのみ込めないA。長い長い通路をひたすら歩み続け、混雑する場所へと辿り着きそうになる。
「風見さん?あ、あの..何処まで行くんですか?」
もう一度だけ、恐る恐る聞く。
「ほら、着きましたよ。パリではなく...
貴方の行くべき所へ。」
風見はやっとAの手首を解放してやると、
にっこり微笑み仲間達と一緒に、少し離れた
通路脇へ さっさと行ってしまう。
Aの視界を遮っていた風見の大きな背中。
それが消え、次に飛び込んで来たもの...
腕を組み、何やら考え事をしているかの様な1人の男性。何度確認したか分からない、自身の腕時計。
それをもて遊びながら、行き交う人をじっと眺めている。
そんな彼は、人混みに紛れていても一際目立つ。
グレーのスーツを身にまとい、佇む姿は実に絵になる。
太陽みたいに煌めく美しい髪に、
健康的な褐色の肌。
そして、海の様な深いブルーの瞳..
見間違う筈の無い彼。
けれどその瞳はどこか遠くを..
虚ろに見つめているようにも映った。
彼に何と..
声を掛ければ良いか分からない。
「あっ..」
つまらぬ思惑―――
その迷いが、僅かにこぼれる。
「..A??」
愛しい者のかすかな声に反応してしまう。
ずっとずっと、聞きたかった優しい彼の声。
それは穏やかに響く。
大きく見開かれたブルーの瞳は、ただ一点だけを
見つめている。
ただ一点を..
その熱い眼差しに縫いつけられたかの様に、
Aは動けない。
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やっち(プロフ) - 良かったです。すれ違いが凄かったけど最後は結婚出来て良かった! (2022年8月4日 6時) (レス) @page49 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - salomeさん» こんにちは!続編のご希望頂きまして有難う御座います(^^)ゆっくりではありますが、只今準備させて頂いてます♪新作と続編、一旦同時にリリースしたいと思っております(*^ω^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - 華花。さん» 初めまして!誤字脱字などお見苦しい点など多々あったにも関わらず、その様に仰って頂き嬉しい限りです(^^)やっぱり自分の好みは中々変えれず、新作も同じ様な雰囲気の作品かもですが宜しくお願い致します(*^o^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
ポポロン(プロフ) - 星の桜さん» 有難う御座います!最高と言って頂けてとても嬉しいです(^^)短編もご希望頂いて俄然創作意欲が湧きます!只今準備中なのでもう少々お待ち下さいませ(*^o^*) (2019年6月10日 9時) (レス) id: 79673368f7 (このIDを非表示/違反報告)
salome(プロフ) - 完結おめでとうございます出来たら出産の後の2人目の子育てやハロが降谷家に来た話とがいっぱい書いてほしいです (2019年6月6日 13時) (レス) id: 31aa9c013b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポポロン | 作成日時:2019年4月14日 4時