◎甘えたい ページ11
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「……すき」
横から聞こえてきた小さな声に、
思わず耳を疑った。
「…今、何つった」
夢中になっていたスマホのゲームを中断して、声のした方に目をやると
そこにはいつもとは違い威圧感のない目で俺を睨むAがいた。
「…すきっていったの」
…………いや。聞こえたけど。
そういうことじゃ、なくてさ。
「急にどうし…うわっ!?」
決して広くはないソファーの上で、彼女に向き直ろうと体を動かしかけた、瞬間。
隣にいたはずの彼女は、何故か俺の上にいた。
「えっ……と…?」
小さな体が俺の膝の上に乗って、
細い腕が俺の首に回される。
ぎゅう、と音が聞こえそうなほど強く抱きつかれて、あまりの動揺に持っていたスマホは静かに手から滑り落ちた。
…まて、落ち着け祐希。
俺の彼女は今日、酒飲んでたっけ?
「…よ、酔ってる?」
「お酒なんか飲んでないもん」
で、ですよね…。
じゃあ、なんで。
わかってると思うけど一応言っておくと、俺の彼女はわりと冷たい。
いや、冷たいっていうか、なんて言えばいいの。クール?とにかく、ツンツンなんです。わかってると思うけど。
酔ってれば話は別だけど、
素面のときに「すき」なんて自分から言うことはまず無い。
ましてやこんな積極的に、
だ、抱きついてきたりなんて…
「…何か、あった?」
「……なんもない」
「じゃあなに、」
俺を抱きしめたまま肩に顎を乗せていた彼女が、小さく溜息を吐く。
少し動く度に耳に当たるふわふわの髪が擽ったいなぁなんて思っていたら、ふいに彼女の温もりが離れていった。
「………もう、うるさい」
そう言って口を尖らせた彼女の顔が、
再び近づいてくる。
「え、ちょ……ん」
何するの、なんていう間も、なく。
これ以上何も聞くなと言わんばかりに、近づいてきたぷるぷるの唇に俺のそれを塞がれた。
なに。
なに!?
これは、………夢?
って、夢なわけないんだけど、
それほどまでに普通じゃあり得ないことで…
「んっ…はぁ、ゆうき、」
「んぅっ、ちょ、A…!」
混乱した頭を必死に落ち着かせて、少し惜しい気もするけど、華奢な肩を掴んでAの体を引っぺがす。
むぅ、とまた不満げに口を尖らせた彼女は、見事なまでのジト目で俺を捉えた。
「…嫌なの、ちゅう」
「嫌、じゃないけど!どうしたんだよ急に!いつもは頼んでもしてくれないくせに…」
「甘えたいの」
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ぷーこ(プロフ) - あきさん» すみません、もし教えていただけるようでしたらどの作品か教えていただけると幸いです。 (2016年8月9日 18時) (レス) id: 0bb9c9012b (このIDを非表示/違反報告)
ぷーこ(プロフ) - あきさん» わざわざ コメントありがとうございます。それはそちらの作品と私の作品どちらが先に書かれたものでしょうか?お手数をおかけしますが教えていただけると嬉しいです。すみません。 (2016年8月9日 18時) (レス) id: 0bb9c9012b (このIDを非表示/違反報告)
あき - はじめまして、コメント失礼します。とある作品を読んでいたところ、この作品のあるお話と酷似しているものを見つけまして、一応ご報告をと思いコメントさせて頂きました。 (2016年8月9日 8時) (レス) id: 7970285b3f (このIDを非表示/違反報告)
ぬんぬん♪ - えっ終わり!?嘘やろ!?!? (2016年6月11日 0時) (レス) id: f5deb9fb59 (このIDを非表示/違反報告)
藍 - 完結……したのですか? 楽しみに見させていただいてたので残念です…… (2016年5月22日 23時) (レス) id: 191aa71f46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷーこ | 作成日時:2016年1月5日 20時