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…そう思っていた、
数時間前までは。
「大ちゃんなにそれ…」
俺の声に振り返った大ちゃんは、
一瞬あ、やべ、みたいな顔をした。
ポカンと立ち尽くす俺の隣に、
知念がケラケラ笑いながら近寄ってくる。
「いのちゃんおはよ。
大貴がパーカーじゃないのなんか違和感だよね」
「いや、もーあちーから」
助け舟でも何でもない茶々に、
確かに助かったみたいな顔をして返している。
「そーだとしても白シャツ…
クク、なんか違和感ハンパないんだけど」
肩を揺らしながら茶化す知念。
その間も俺の目はずっと
シャツのロゴに釘付けになっていた。
「そのロゴ…友達が着てた」
「あ、こっちね」
安堵したようにロゴを摘む大ちゃん。
…ホッとした?あー。そーゆーこと。
ちょっと浮かれちゃってるかな、って、
きっと後ろめたいんだ、大ちゃん。
でも残念ながら俺はそのロゴの"意味"を知っている。
「なんか、影が残るんでしょ?」
「そー!すごくない?」
「え、どーゆーこと?」
くるくる大ちゃんの周りを回ってた知念が、
あ、と、裾の1箇所を指差す。
そこには女性らしい細くて綺麗な指先。
まるでキスマークだな、と嫌気が差した。
「お熱いね〜」
出来るだけ軽い声音で。
笑顔を浮かべてみるものの、引き攣ってんなこりゃ。
自分の口許からギシギシ音が聞こえる。
こんな思い今更なのに、
いつまで経っても身体は慣れてくれない。
「好きな人なんだよね〜?」
傍のソファでスマホをいじっていた光が
ニマニマ大ちゃんを覗き込んだ。
……何だそれ。
キスマークよりも重いじゃないか。
ひゅーと囃し立てる知念が、
にしてもシャツ以外無かったの?と
また笑い出したから、
「大ちゃん似合わない」
シャツが。っていう風を装って、
その細い指の持ち主に思いっきり悪態を吐いた。
嘘。
大ちゃんには綺麗な女の人が似合ってる。
そんなこと、俺がいちばん分かってる。
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作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時