検索窓
今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:29,967 hit

ページ36

どんな部屋なんだろう、と
ワクワクしながらリビングに入って、


それから俺は絶句した。




何度も何度も夢で見たリビング、そのものだったから。




「てきとーに座って〜。ひかるビールでい?
 日本酒もあるけど………って、どした?」


グラスを両手に、不思議そうに突っ立っている。



怖くはないんだけど、どこまでも怖いような。
ぞわりとして、でも心の底は凪いでいるような。

デジャヴ、夢で見た、さっき出て行ったはずの夢の中。

心臓が震えている。




「………頭ん中に、」

「ん?」

「俺の頭ん中に昔から、おっきな月が、
 自分めがけて突っ込んでくるイメージがあるんだ…。
 例えとかじゃなくて、ほんとに見たんだ…」

「うん、ひかる昔っからよく言ってるよね」


穏やかな声と、テーブルにグラスを置く2つの音。


「…最近それを、夢でよく見るんだ」

「え…」


声に焦りを感じて、いのちゃんを見る。

そこにはいつもの
飄々としたポーカーフェイスはなくて、
あのリビングで最後に見た、
焦る顔したいのちゃんが居た。


「え…?」


なんでそんな顔するのか分からなくて、
俺また夢に戻った?って訳分かんなくなり始めてたら、
いのちゃんは俺の側をすたすたと通りすぎてって、
ぎこちなくソファに座り…、頭を抱えた。



「え…?いのちゃん…?」

「ひかるごめん…」

「え?」


小さく落ちた声と、頼りない薄い背中。
触れてあげたい。

優しくしたい、それだけだった。



「ちょっと前に…俺海外行ってただろ?
 そん時たまたま会った小さい女の子が…
 自分は"ゆめのつかい"だ、って言うんだ」



それだけで、十分だと思ってここに来た。



「夢で逢えたら何がしたい?って訊くから…。
 いやそん時、俺だってそんなの信じてなかったよ?
 でも…でもそうやって訊くからさ。
 日本人なんてほとんど見ないような異国の地で、
 相手子供で、そばに誰もいなかったし…」


「…なんて答えたの?」



薄い膜が剥がれて、
剥き出しのいのちゃんに、やっと会える気がした。


そしてそのいのちゃんは、
優しくするだけじゃ、きっと足りない。





「………ゆっくりして、
 何もせずにゆっくりしてさ、それで…」





のんきにひかるに愛されたい。





fin.

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (89 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
182人がお気に入り
設定タグ:Hey!Say!JUMP , ybhk , hkin
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。