夢で逢えたら _hkin ページ32
_side hk
俺の頭の中に昔から、
大きな月が、
自分めがけて突っ込んでくるイメージがある。
例えとかじゃない。
ほんとに見たんだ。
小さい頃は、自分だけの不思議な秘密の記憶みたいで
トクベツで嬉しくて、
宝物のようにしまってたんだけど、
今思うとあれは夢か何かだったんだろう。
もしかして付けっぱなしの深夜のテレビでやってた
映画の1シーンだったのかもと思って、
色々調べてみたけど見つからないから多分夢だ。
それを何となく思い出して、誰かに言いたくなった。
俺の膝の上でいのちゃんがくつろいでいる。
ごろごろにゃーとでも鳴きそうなくらい
リラックスしていて、
こんなに俺の前でリラックスしているいのちゃんは
見たことがない。
いつも俺と居るときのいのちゃんは、
当たり障りが無くて、隙が無くて、
薄い壁というか、防波堤のようなものを作っていて…。
膝枕なんて言わずもがな、だ。
見たことがないついでに、ここは一体どこだ?
家のようなんだけど、俺んちじゃない。
じゃあ誰んちって…。
いのちゃんのスマホが充電器に刺さってる。
俺のスマホは見当たらない。
ぐるんと寝返りを打つから
髪が腕に当たってくすぐったくて…
あ、いのちゃん部屋着だ。
じゃあここはいのちゃんち?
うーん、よく分かんないけど…。
でもまあいっかって思えるくらい心の中が穏やかで、
少しのさざ波も立てたくないくらい
ゆっくりと時間が流れてる。
この時間に水を差したくないし、
俺はなぜかさっきの話をどうしてもしたい。
「ねえ、いのちゃん。
変なこと言ってるって思わないでほしいんだけど…」
ん、と言いながら開いた目はとろんとしてて、
どうしようもなく愛おしい、
そんな気持ちが溢れてきた。
「俺、昔多分夢を見て、それをずっと覚えてて…」
えさを待つ猫のようにじっとこちらを見つめる瞳。
照明がキラキラと反射して、まるで星空みたいだ。
「大きな月が自分めがけて突っ込んできたんだ…」
「あれのこと?」
いのちゃんが指差す先には、夢で見た大きな月。
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作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時