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先週末、俺は別の用事があって行けなかったけど、
3人で渋谷に買い物に行ったらしい。
その時たまたま入った店で一目惚れしたニットを、
満を持して今日下ろしてきたと言う。
だから朝からご機嫌ヒカさんだったのか。


「ホントはオンナノコの服探しに行ったんだけどさ〜」


学食でいつも頼むラーメンに手を合わせながら、
ルンルン、と音でも聞こえてきそうだ。


「それがそのニット?」

「うん、この色めっちゃ可愛くね?」


ひかるが嬉しそうに笑ってるのを見ていると、
腹の底がふつふつと温まって、
こっちまで嬉しくなってくるからもうお手上げだ。

そんな俺の気も知らず、
ひかるはニットに汁が飛ばないよう、
慎重にラーメンをすするのがもどかしいらしい。

ラーメンを頼まなければ良いだけの話なのに、
箸を持ってから気付いたんだと。


「あ、薮くんおつかれ〜」


サークルの女友達が通り過ぎる。
なんか既視感…と思ったら、そうだ。
ひかるのニットと同じ色のニットを着ている。

少し離れた席に着く後ろ姿を見送りながら、
その色流行ってんのか?と訊こうと向き直ると、
ひかるはまだその子のことを見ていた。


「…やっぱ女の子の方が似合うや」


さっきまでのご機嫌ヒカさんはどこへやら。
ぶすぅ、って効果音が聞こえてきそうな頬っぺた。

何で、可愛いのに。


「似合ってるよ、可愛い」


ニットも、行儀悪く箸を咥えたまま
据わった目で見つめる顔も可愛い。


 

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作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時

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