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想定外の圧に慌てて手を振って、
いやいや別に
慌てることじゃない、と持ち直した。
「まあなんだ、今のは
犬とか猫とかに可愛い、って思うのと一緒で…」
「薮ちゃん、俺のこと犬とか猫だと思ってるんだ…」
「ちげーよ、今のは例えっつーか…。
…いやいや待て待て！！
お前ブラ着けてんのか？！？！」
お化けでも見たかのように固まってる俺に、
ひゃっひゃ笑う伊野尾が山田の肩を抱く。
「俺が買ってあげたんだよね〜♡
あ、ちなみに俺は着けてないよ〜
ひかるは知らないけど」
「…」
ゆっくりひかるの方を向くと、
顔を真っ赤にして俯いている。
え着けてる？！？！？！
いやでもこいつはこういうハナシが苦手だから、
ただ単純に恥ずかしくなっている可能性も…
え、どっちだ…
それから否定も肯定もせずに
だんまりを決め込まれたまま店に着いてしまった。
どっちなんだ…
３人がいちごスイーツのバイキングを
キャッキャ楽しむ間中、
熱いコーヒーを流し込みながら
考えこむハメになったのはひかるのせいだ。
その後、ひかるは
バイトがあるから、と
一足先に帰ることになった。
変なとこで過保護な伊野尾が
駅まで送って行くと言って聞かないから、
俺はまだ気が済んでいない山田に付き合っている。
「どんだけ食うんだよ…
そのうちお前いちごになるぞ？」
「逆に薮ちゃん何しに来たの？
さっきからコーヒーしか飲んでないじゃん！」
山田の意見はもっともだ。
甘いものが苦手な俺は、いちごを鑑賞しながら
コーヒーを飲み続ける変な客に成り下がっている。
「薮ちゃんの分まで俺が食べてあげてるんだからね？」
リスのように頬張る姿は
他の女性客に引けを取らず可愛い。
なんなら山田の方が可愛いかもしれない。
これだけ可愛くなりゃ、女装しがいもあるよな…。
「…山田は伊野尾に付き合わされてんだって？」
口いっぱいに頬張りながら、きょとん、とするから、
いのーからきーた、と付け加える。
そしたら理解した、って風に笑ってこくこく頷いた後、
いのーちゃんは何て言ってた？と尋ねてくる。
「男どもが声掛けてくんのが
おもしれーからって言ってたぞ。止めてやれよ」
苦笑しながら言ったら、山田も同じように苦笑して、
でも俺より少し大人びた顔をして言った。
「伊野尾ちゃんのは、腹いせなんだよ…」
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作者名：ponpoco | 作成日時：2021年3月22日 23時
