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ジッパー _ybcn ページ3

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「…こーたは流れ星みたことある?」

「いや、俺もないな」


『…真っ暗な空間に、なんかね、
 一瞬だけ光りのチャックが開いたような感じ…』


「…だってさ、クク」



クラクラするような赤ワインの芳香の中に、
純粋無垢な恋人の声がラジオを通して響く。

ああ、僕の、じゃないよ。
目の前でふにゃふにゃ笑う、この人の、恋人。



「…独特な表現するよな、ふふ」


僕はただの脇役だ。
目の前の主人公に片想いをするだけの、ただの脇役。



でも多分良い役だよ、

主人公とヒロインの恋路を邪魔する
にっくいヒールになるんじゃないかな、今夜。


左肩に回った腕が熱くて、
さっきからたまにぎゅっと引き寄せられるから。




ラジオが消される。

なるべく何でもないフリをして右隣を伺えば、
細めた目に絡め取られて動けなくなった。




昔から僕の中で声がし続けている、平穏を愛せ、と。

もうひとり、衝動に手を伸ばせ、と。




指が伸びる。こちらに向かって。
髪に差し込まれて、甘く掻き撫でられる。



ゆーり、と動いた薄い唇は、
そのままゆっくり引き上がる。

ニヤリ、目の前の衝動が笑う。



それを合図に、誘われるがまま、
舌を絡められるがまま。

僕たちはズルズルとずり落ちた。


そして宏太のデニムのジッパーに手を掛ける。




"真っ暗な空間に、
光りのチャックが開いたような感じ"




はは、こっちも似たような状況だよ。ヒカ。
嫌がるだろうな、下ネタだもん。

嫌がるのはそこじゃないか。




流れ星、人はそれに願いを込める。

僕の願いは、




張り詰めたソレに思わずゴクリと喉が鳴った時、
自分のモノが全く反応してないことに気づいた。


「ゆっくりでいーよ」


甘くて柔らかな声が、耳元に優しく落ちる。

撫でられた頭がゾクゾクした。



普段不器用な癖にこんな時だけ器用なんだ、って
そんなことにもクラクラしてしまう。

物理的な刺激で、やっと芯を持ち始めたソレは、
あっという間に宏太の手の中で達して、
それからはもう恥ずかしくて思い出したくない。




脇役でも良いから、と
僕の出演回数はどんどん増えていった。




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作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時

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