真昼の月 _ybhk ページ19
_side hk
海辺でのMV撮影が夕方終わり、
次の日オフ組で急遽
近くのホテルに1泊することになった。
夕食はこの後車で少しの、
美味いと聞いた店に行く予定。
それまでの間、さっきの浜辺まで降りてみる。
海って落ち着く。
波音を聴きながらぼーっとしてたら、
混じってざくざくと砂を踏む音がする。
振り返ったら薮だった。
「…ふ、居ると思った」
ふにゃりと笑う薮に、
嬉しかったけどそれは口にしない。
古い恋人。この世でいちばん好きな人。
過ごした日々は楽しくて、
心から安全で、安心できて、
薮も幸せだったと思う。
でも恋人はいつか終わりがくる。
それが怖くなってしまった。
友人なら、友人なら終わりなんてこない。
そう一度思ってしまったら、もうダメだった。
薮は知らない。
俺がどんな気持ちで別れを告げたか。
あの時の絶望に満ちた顔を俺は多分一生忘れない。
変だろうけど、逆にあの瞬間、
薮の中の俺への愛を確かなものとして感じられたから。
その代わり俺も知らない。
お前が今どんな気持ちで俺の側にいるのか。
きっと薮はあの時、俺の不安を口にすれば、
言葉をくれただろう。
そのおしゃべりな口から、溢れんばかりの俺への愛の。
けど言葉はいらない。
ただ事実だけが欲しい。
友人として、仕事仲間として、それ以上の何かとして、
お互い唯一無二の存在であり続けたい。いつまでも。
「気持ちーなー…」
肩に重み。
後ろから抱きすくめられる。
気が遠くなるくらい、繰り返される波の音。
薮の腕が温かい。
いつだって温かくて、大好きだ。
やぶ、いま何考えてる?
同じだと嬉しい。同じじゃないだろうけど。
夕陽をキラキラ弾く海、
辺り一面染まる赤、ピンク、オレンジ。
暖かい色に包まれて、このまま。
暖かい薮に包まれて、このまま、ずっと。
変わらず、このまま。
fin.
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作者名:ponpoco | 作成日時:2021年3月22日 23時