「離れていかないで」 ページ46
手を繋いで歩く帰り道
「ねぇ、チャンミン
今日面白いお客さんがいてね・・・」
仕事が終わり、ホテルを出た瞬間から
アイツは私の手を握り締めてきた
「それで...」
「・・・・」
「...ん？チャンミン？」
「...え？」
「どうしたの？ぼーっとして」
「いえ...」
何だかずっとうわの空なアイツ
変なの...
にも拘わらず、家に着くまで
アイツは一度も私の手を離さなかった
時間も遅いし、二人で一緒に入ったお風呂
いつもなら
「Aさん、ダメですか...？」
そう言って私に触れてくるのに
今日は何にも言ってこない
どうしたんだろう...
アイツに何かあったのは明らかなので
寝る前にちゃんとアイツの話を聞く事にした
「チャンミン、ここに来て？」
寝室に入るなりベッドに腰掛け
アイツを呼んだ
それに素直に従いつつも
隣に座ったアイツは真っ直ぐ前を見つめたまま
やっぱり何も言わない
「チャンミン...
どうしたの？何かあった？」
するとようやくアイツがゆっくり私の方を向いた
でも、その顔は依然として無表情のまま
「何かあったのは...
Aさんの方じゃないですか？」
ドキッ...！
瞬間、心臓が大きく跳ねた
なぜって
アイツの目が怒っているように見えたから
社食での事、誰かに聞いたの？
私が何も言わなかったから、怒ってるの...？
そうだとしても何て説明すればいい？
アイツはどこまで知ってるの？
自分の悪口も、聞いてしまったんだろうか...
「チャンミン...」
考えがまとまらず
とりあえずアイツの名前を呼んだ瞬間
グイッ...！
「え...」
思いきりアイツの胸に抱き寄せられた
「Aさん、ごめんなさい...。
僕が子供っぽい嫉妬をして、Aさんに食べさせてなんて言ったばっかりに、Aさんにイヤな思いをさせてしまって...」
アイツの声が震えている
アイツは私に怒っていた訳じゃなかった
自分に腹を立てていたんだ
「Aさん...」
ぎゅうっ...
痛いくらいきつく抱き締めてくる
アイツの腕
まるで私に
「離れていかないで」
そう言っているかのようだった
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作者名：ami
| 作成日時：2013年7月19日 13時
