胸のシミ ページ44
「絶対似合うに決まってるよね、定番だし」
「似合うに決まってるってるじゃん。
似合わない人を探す方が難しいのに、モデルだよ？あのスタイルだよ？」
着替え中もずっと喋りっぱなしの二人
「だよね、着たまま出てくるかな」
出るに決まってる
だって...
「ふふっ(笑)」
サイズもピッタリ！
「よし！」
鏡に写った自分の格好をもう一度確認して
シャッ...！
勢いよくカーテンを開けた
・・・と同時に
飛んできた女性スタッフ、しかも二人
「わぁ、よくお似合いですよ(笑)
そのスリムパンツにもピッタリですね！」
「やっぱりモデルさんが着ると違いますね(笑)」
「うんうん、カッコいい(笑)」
Aさんは...？
「あ、いた！」
「「え？」」
騒ぐ女性スタッフを尻目に
Aさんを探した僕
店の入り口で
僕に背を向けて佇むAさんを見つけて
直ぐ様口にした
「これ、着ていきますから
値札取って貰っていいですか？」
.
「お待たせ、Aさん(笑)」
「アレ...もしかして彼女かな」
「絶対そうだよ。
だってペアルックだよ？」
「にしてもわざわざその為に買うとか
大分イメージ変わったんだけど」
ミーハーなスタッフが噂するように
Aさんとペアルックにしたくて
ボーダーのカットソーを買った
「ふふ、どうですか？(笑)」
クルッ！とAさんの前にまわる
「え？あぁ似合ってるよ...(笑)」
「ペアルックですよ？
ペア・ルック、ふふっ(笑)」
「あ...ホントだ」
え...
あ、ホントだって...それだけ？
僕の期待を裏切って
反応が薄いAさん
「Aさ・・・」
「あ、そろそろ時間だよ？行かないと」
「え...あ、うん」
「あっ、行っちゃった...残念」
「また来てくれるかなぁ」
ミーハーなスタッフの方が
よっぽど反応がよかった
「Aさ・・・」
「あ、ヤバイ！
ホントに急がなきゃ」
僕の少し前を
ズンズン歩くAさんの後ろ姿に
トクン...と微かに
胸にシミをつくった違和感
それが明らかに
僕の胸全体を覆う程大きくなったのは
映画が終わった後の事だった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年6月27日 10時
