アイツの日記帳11 ページ32
「ごちそうさまでした、レイ。
すっごく美味しかった」
「そ？よかった。今コーヒー入れるね(笑)」
レイが作ってくれたハンバーグを完食し
ソファで寛いでいると
「チャンミンとまた
こうして一緒になれてよかった...」
コーヒーをテーブルに置いたレイが
僕の肩にそっと頭を預けてきた
甘い香りがするその小さな頭を抱き寄せ
「ん...僕も」
ちゅっ...
そこにキスを落とした僕は
本当は全く別の事を考えていた
ここのところ
ずっと気をとられていた事を
「ねぇ、チャンミン。
今度の休みはどこに行きたい？」
Aさんの好きな人って
一体誰だろう...？
いつかはその人に告白とか、するのかな
「車でも借りて、遠出でもする？」
もしうまくいけば
Aさんはその人とこうして
今の僕達みたいに抱き合ったり
キス...したり、するんだよね
「チャンミン...？」
僕に向けてくれた笑顔をその人に向けて
僕に向けてくれた優しさをその人に向けて
この先
Aさんの一番になるのはその人で
僕じゃ、なくなるんだ...
「...やだ」
「え？」
「そんなのやだ...ッ」
「え？チャンミン？いきなりどうし・・・」
いつの間に流れていたのか
僕の頬を伝って落ちる涙に気付いたレイが
言葉を失った
どうして、気付かなかったんだろう
平岡君の存在が気になって仕方なかったのも
レイと付き合ってから覚えた違和感も
全ては僕がAさんを好きだったからなのに
あの日ポケットに突っ込んだ手が寂しかったのは
隣に繋いでくれるAさんがいなかったから
レイに「大人になった」と感じさせたのは
今の僕が甘えたい人は
レイじゃなくて、Aさんだったから
「チャンミン...」
「ごめんねレイ、ごめん...
僕、やっぱりレイとは付き合えない」
「え...」
「好きな人がいるんだ...好きな人が」
レイより、誰より
好きな人が
泣きながら謝る僕にレイが俯いた
その小さな肩が震えている
でも、ごめんね？レイ...
僕が抱き締めたいのは
泣いている時に
誰よりも真っ先に抱き締めてあげたいのは
レイじゃなくて
レイじゃなくて...
Aさんなんだ
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作者名：ami
| 作成日時：2015年6月27日 10時
