バカみたいな幸せな夜 ページ28
「いただきま〜す！」
元気よくそう言って
嬉しそうに料理に手を伸ばしたアイツ
今日のメニューは肉じゃが
作ってあげると言っておきながら
結局作ってあげていなかったから
よかった
美味しいみたい(笑)
美味しいかどうかは聞かなくてもわかる
アイツのほっぺがハムスターになっているから
幸せそうな顔
「ふふっ(笑)」
私も幸せいっぱいでご飯を食べていたら
アイツの箸が急にピタッと止まった
なに？なんだかイヤな予感...
アイツは持っていた箸を
ゆっくり箸置きに置くと
「はぁ...」
わざとらしいため息をついた
こーゆうため息をつく時は
面倒くさい事が起きる前触れ(失礼なヤツ)
聞きたくないけど
チラッチラ私を見てくるから
仕方なく聞いてみた
「...どうしたの？チャンミン」
アイツは再びわざとらしいため息をついて言った
「Aさん
岡田さんの歓迎会、明日ですね...」
そうだった
忘れてた...
面倒くさいのはこっちだった
最近フロントサービス課に
中途採用で入社した岡田智久さん
31歳独身でバツイチの彼は
なぜか私が気に入ったらしく
やたらとアプローチしてくる
もちろんアイツと結婚してる事は知っている
それでも離婚経験があるからなのか
全く気にする事もなく積極的
どこまで本気なのかもわからないけど
この間なんか休憩中突然手を握ってきた
もちろんすぐに離して貰ったけど
アイツが見ていたらと思うとゾッとする
だから当然アイツには話してない
一応彼は上司だし
そんな彼の歓迎会が明日行われるのを
すっかり忘れていた
「そうだったね...」
「Aさん
明日はずっと僕の隣にいて下さいね」
「うん」
ちょっと大げさだけど
「明日はずっと一緒にいて私を守ってね」
テーブルの上にあるアイツの手に
自分の手を重ねた
みるみる明るくなるアイツの顔
「はいっ！明日はずっと一緒にいて守ってあげますから、安心して下さい！」
「うん(笑)
冷めちゃうから食べよ？」
「うん(笑)
はいAさん口開けて？食べさせてあげる」
「え？いいよ(笑)」
「いいから、ほらあ〜ん」
「ふふっ、じゃああ〜ん(笑)」
パクッ...
「可愛い...」
ちゅっ...
「ちょっとチャンミン、ご飯中だよ？」
「そんなの関係ありません」
こうして写真立てが増えた部屋で
他人から見たらバカみたいな幸せな夜が
いつものように過ぎていった
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作者名：ami
| 作成日時：2013年9月10日 11時
