第77話 飛び出した理由 ページ35
『大丈夫…だいじぉぶ！』
｢…うぅ、お姉ちゃん。｣
振り返ればすぐそこに高波。振り返ってはダメだ。とにかく走る。
造船島のまで行けば安全だとカクは言っていた。前に見える大橋の階段を登るために真っ直ぐ向かっていた。しかし、それ以上に高波は迫ってきていた。
ーー間に合わないかもしれない…。
そんな考えが頭をよぎる。
死ぬのは嫌だ。そう思えるのはきっと、カク達が私の居場所をくれたからだ。
そんなカク達を思うと、飛び出したことに少し後悔するが、それ以上に私はルッチの元に行きたいと思ってしまっていたのだ。
ルッチが熱を出して倒れた時、寝てる姿を見た時、ルッチの脆さ感じた。
｢ルッチなら大丈夫。｣
それはみんなの口癖だ。
彼はひどいプレッシャーに耐え続け、今までよくやってきたと思う。
助けたいと思った。それを言った時、カクはお前に何が出来るなんて怒ったけど…。
結局ルッチには会えないし、カクの言う通りだなんて笑ってしまう。
ーー笑うしか…ないじゃない。
私は痛む胸を、唇をかみ締め堪えた。
視界がぼやけるのを雨のせいにして走る。
疲れと濡れた地面で足が滑る。
『…あっ！！』
滑った足を止めることが出来ずそのまま地面に転がる。
男の子を放り投げまい背中にまわした手を離せず、顔から転んでしまった。
『…うぅ…。』
｢うっ…お姉ちゃん大丈夫！？｣
すぐに立ち上がろうと顔を上げるとすぐ目の前まで波が来ていた。
ーーダメだ…。
私は震える男の子を強く抱き締めた。
『…ごめん…ごめんね…。』
その時、遠くから誰かが私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、この嵐にこの波だ。聞こえるはずがない。
しかし私はそのほんの僅かな希望に藁にもすがる思いで顔を上げる。
『…助けて！』
｢ーーーそれでいい。｣
今度は確かに聞こえた声の方を見れば、目の前にいたであろう人影が｢…剃刀(そる)｣と呟き、私の後ろに飛び出していた。
｢ーー嵐脚…凱鳥！！｣
私が振り向いた時に見えたのは、いつもより体の大きなルッチらしき人物。
その先に見える高波が、ルッチの目の前だけ縦に裂け、割れた。
そこから波は崩れ、先程までの勢いがなくなった。
それをただ呆然と見ていた私の体が浮く。
元の体に戻っていたルッチは私と子どもを抱え、空を蹴って走った。
『…よかった…ルッチ…。無事で…。』
｢…バカが。お前が言うな。｣
悪態をつくルッチを最後に、私は意識を手放した。
第78話 失ったもの→←第76話 見つけたのは（ルッチside）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アタル(プロフ) - サクラさん» サクラさん、ありがとうございます！コメントで感想を送ってくださると本当にやる気が出ます。自分で始めたので頑張るというのもなんか変な感じですが、頑張ります！ (2019年10月12日 17時) (
レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - カクもルッチもカッコいい…！毎回キュンキュンさせてもらってます！更新頑張ってください！ (2019年10月12日 16時) (レス) id: 2be65d96af (このIDを非表示/違反報告)
アタル(プロフ) - akane10746さん» 前回からコメントありがうございます！続けてみてくださっていてとても嬉しいです！頑張ります。 (2019年10月8日 13時) (レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
akane10746(プロフ) - 毎回面白いです!更新頑張ってください！！！ (2019年10月8日 9時) (レス) id: 38a8873821 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アタル | 作成日時：2019年10月7日 0時
