星10個 ページ10
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
ただ、目の前に刀が迫っているから、私の頸が狙われているんだと思った。
腰の刀を抜いて、攻撃を受け流す。
呼吸を整える暇もないほどの連撃。ひたすらにそれを捌いていると、視界の隅で鬼がニタリと笑った。
「A!」
鬼の方を見て、彼は私の名前を呼んだ。
唐突に理解した。
それぞれに違う姿を見せられる血気術。さっきから私の頸ばかりを狙う時透さん。涼しい顔で立っていられる鬼。
景色を上書きをして、時透さんから見たら、私が鬼に見えるようにしている。
大勢の隊士が戻ってこなかったのは、この術で同士討ちをしたからなんだろう。
神社の方から何かが腐ったような臭いもする。
このままではいけない。
私の体力は無限じゃない。今は攻撃を受けないでいれているけど、一撃一撃が重く速いからいつまで持つかは時間の問題だ。
体力が尽きたら、たぶん、私を鬼だと見えている彼は簡単に私の頸を斬る。
それは一番避けたいことだ。
でも、ここからじゃあ頸は狙えない。星降らしは大振りだから、確実に私の命も危なくなる。
これは、致命傷覚悟で突撃をするしかないのかと思った時、立っていた鬼は何かをひっぱり出してくる。
闇に慣れ始めた目は、それが何なのかを捉えた。
腕だ。筋肉質な腕。根元の部分から引きちぎられてしまったようだ。
攻撃を防ぐ間に辛うじて見えたのは、あの子の姿で腕を美味しそうに頬張る鬼。
時透さんの攻撃を受け流さず、最低限当たらないようにして避ける。切れてしまった髪の束が地面に落ちた。
「お前ッ!!それ以上その姿で続けるなら、今すぐ頸を斬るぞ!!」
自分のものとは思えない程、怒りが剥き出しになった声。言い終わらないうちに、鬼はまたニタリと笑って腕を喰べる。
刀を強く握り、鬼の方にかけ出す。
体中に今まで入れたことのない程の空気を取り込む。心臓が耳から飛び出すんじゃないかと思うくらい煩かった。
「全集中・星の呼吸壱の型星の瞬き」
壱の型は純粋な速さだけ必要だ。
正確に頸を狙い、何よりも速く刃を通す。
鬼の頸が宙を舞う。
あの子の姿はもうしていない。童の大きさの胴体が地面に倒れた。
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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時