星が鳴る【時透無一郎】 (ページ45)

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星45個ページ45

私が座ると、ほぼ同時に時透さんは口を開く。

「僕は、Aのことを女の子だと……思うよ」

「え？」

思わず漏れてしまった言葉に、手で口を塞ぐ。
いや、これは仕方ない。

だって、彼の言葉はまるで、私を男だと思っている人がいるみたいじゃないか。

確かに、身長が特別低い訳でも、女らしい体つきをしている訳でもないけど、まだ一応成長途中。
これからきっと育つはずなんだ。

じっと自分の胸元を見下ろす。目立った障害物はないので、隊服のベルトを首を動かさずに見えた。
ほんの少しだけ虚しくなった。

私の行動をきょとんとした顔で見ていた時透さんに「続きをどうぞ」の動作をする。

「僕は、Aが作ってくれた料理を美味しいと思う」

「あ、ありがとうございます」

「稽古で手を抜かないところはすごいと思うし、笑っているところを見ると微笑ましく思うよ。それと…」

それからが少しだけ長かった。
とにかく時透さんは、私が今までしたのであろう行動を褒めていた。

最初の五分くらいは褒められることへの嬉しさや照れでしどろもどろになっていたが、途中からはこの人は何をしたいんだろうという疑問でいっぱいだった。

今まで、褒められる時は何かした後で、まとめて褒められることなんてなかった。

しかも、初めて聞いたものが多い。

美味しい団子を食べた時に目を輝かせたことが面白かっただとか、手紙の返事を書くために字の練習をしていたところを見て努力家だと思ったとか。

寝言で突然「白玉と団子は違う!」と言い出した時は思わず笑ってしまった、と聞いて顔から火が出るほど恥ずかしかった。

穴があったら入りたいほどの褒めちぎりが終わったころには、どっと疲れが押し寄せてきた。

それの原因の時透さんは気持ち嬉しそうに見える。

「だ、だから、僕はこれからもAと一緒にいたいんだ」

「……はあ。」

私が気の抜けきった返事をすると、時透さんはむっとした表情になる。

「僕の言いたいことわかって返事してる？」

「つまり、これからも仲良くしたいってことですよね？」

自分でそう言っておきながら、胸がチクリと痛む。痛みの正体に気づけずにいると、時透さんはため息を吐いた。

彼は少しだけ身を乗り出すと、私の腕をぐいと自分の方に引く。
あまりに突然の事に、思わずぎゅっと目を閉じると口の辺りに柔らかい感覚があたった。