星5つ ページ5
お館様への報告も終わり、私たちは町を歩いていた。
「冨岡さんはこの後仕事が入ってますか?」
「今日は何も入っていない。」
「そうですか。」
……会話が終わってしまった。
沈黙が辛いとか、そんな事はないけど、このままじゃあ冨岡さんと別れて、次会うのがいつになるか分からない。
出来れば、彼ともう少し一緒にいたいと思ってしまう。
でも、なんと言って誘えばいいのか、経験の少ない私には思いつかない。
どうしようかと悩んでいた。
「甘味処に行かないか?」
そう言ったのは彼だった。
たぶん、私は間抜け面。
最初は言葉の意味が理解出来なくて、後から驚きと嬉しさが混じって、頭は混乱していた。
「もちろんです!!」
彼と行ったのはみたらし団子が美味しいと噂の甘味処だ。
私はみたらし団子を、冨岡さんは三色団子を頼む。
「冨岡さんから誘われるの初めてでビックリしました。」
「嫌だったか。」
「いえ、むしろ嬉しかったです。ただ、珍しいなと思いまして。」
「ごゆっくりどうぞ」と言って団子を運んで来てくれた女給さん。
彼女にお礼を言って、みたらし団子をさっそく口に含む。
噂の通り、いや、それ以上に美味しい。
あまりの美味しさに口元を緩ませた。
「Aが、前、団子が好きだと言っていたからな。」
冨岡さんはそう言うと、三色団子を食べる。
私はみたらし団子を持ったまま固まってしまった。
確かに、団子が好きだと言った。
でも、それは数ヶ月前にたまたま会った時の、気にも留めないような会話の中でだ。
それを覚えていてくれた。それだけで私の心は有頂天だ。
「冨岡さんっていろいろ強いですね。」
そう言うと、彼は頭にたくさんの疑問符を浮かべる。
それを見て、最後の団子を口に運ぶ。ちょうど、その時だった。
「休憩中に悪いけど、次の指令だ。北西の島に鬼が出るとの噂あり。すぐに向かってくれ。」
カラちゃんの言葉を聞いて、反射的に立ち上がった。先にお勘定を済ませる。
「冨岡さん、すいません。失礼します。……甘味処、誘ってくれて嬉しかったです。」
「そうか。良かった。」
その言葉を聞いて、私は振り返らず歩く。
鬼に食われそうな人、心が折れてしまいそうな人、全てを守り助ける。
そう決心を固めていた。
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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時