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星31個 ページ31

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"あ"




口を開いて、いつものように喉から空気を出す。そうしたら、「あ」と言えるはずだった。





でも、開いた口から声が出ることはなく、息を吐いているだけだ。
その様子を見ていた胡蝶さんが診察結果を言う。






「原因は分かりませんが、声が出なくなってるみたいですね。おそらく血気術の後遺症でしょう。」






声が出ない。その事実が重くのしかかる。
それは、まだ蝶屋敷にいなければいけない理由になってしまうのか、任務にはいけないのか。
疑問が次々浮かんでは、消えていく。





「一応、本人の意志を尊重しますが、任務に行きたいと思いますか?」





"はい"と言えない代わりに、もげそうな程首を縦に振る。





「わかりました。でも、話せないというのは意外と大変なので筆談などいかがですか?」





胡蝶さんが取り出したのは、筆と紙だった。
書いて話すということなんだろうけど、私は字が書けない。
その事を伝えようと口をぱくぱくさせていると、今まで黙っていた時透さんが口を開いた。






「文字書けないんなら、筆談は無理そうだよね。」





その言葉に頷くと、胡蝶さんは少し驚いたような顔で私たちを交互に見た。





「彼女が言っていることが理解出来るんですか?」





「なんとなくは分かりますよ。」






時透さんが答えると、胡蝶さんは何かを考える素振りを見せた。何故だろう。とても嫌な予感がする。



ベッドのすぐ側にある机の上の花瓶に梅の花がある。綺麗だなんて思っていたら、胡蝶さんが合点のいったように手を叩いた。






「なら、お二人が一緒に行動すれば問題ありませんね。」





私はにこにこと笑う彼女の顔を呆然と見るしか出来なかった。



私と時透さんが一緒に行動?
いくら言葉が理解できるからといって、性格が合う訳じゃない。一緒に行動しても、喧嘩をする未来しか思い浮かばなかった。






でも、今回は私が迷惑をかける側だから、ここは時透さんの判断に任せておこう。
彼が断ったらその時はその時で考えればいい。







「僕は、別に問題ないです。」





感情を読み取ることが難しい声で、時透さんがそう答える。



どうやら、これから先しばらくの未来がなんとなく決まってしまったらしい。
私はただにこにこ笑うしかなかった。

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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時

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