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星29個 ページ29

時透視点





気がつくと、暗い、水の中のような場所にいた。
悲鳴は聞こえてこない。





A。Aを見つけて、一刻も早くここから脱出しないと。
そう思って、一歩踏み出す。
すると、頭の中に何か映像が流れ込んできた。






小さな女の子たち。
片方は気の強そうな子。もう片方はオドオドしている子。
二人はAによく似ていた。







僕が見せられているものがAの記憶である事は、すぐに分かった。
彼女を探しながら、記憶を見続ける。







そうする中で、Aのことがだんだんわかってきた。
家族のこと、嬉しかったこと、頑張っていたこと。






それを踏まえたうえで考える。
鬼の『君に救えるかな?』という言葉の意味、そして僕にも彼女の記憶を見せる意味を。




あの鬼は、Aが過去に囚われているとでも言いたいのだろうか。
それとも、何か別の、これから起こることを示唆しているのか。







階段を上がり続けていると、水面に近いところに何かがあるのが確認できた。
Aかもしれない。たぶん倒れている。





それだけを確認すると、一気に階段を駆け上がる。
長い螺旋階段。少しも彼女に近づけていないように感じる。






「A!!」





ようやく彼女の近くに着いた時、声をかけても反応は無かった。
脈はゆっくりで、呼吸は驚くほど浅かった。




急いで胡蝶さんの屋敷に行かないと。



そう思って担いだAの体は重かった。
意識がないのも理由の一つなんだろう。

なにより、彼女は甘露寺さんのように筋肉の密度が捌倍ではないし、胡蝶さんのように毒を扱って鬼殺をする訳ではない。





上背だって特に大きくないAなりの決断の結果なんだと思う。






水面に手が触れると、僕達はあの寂れた墓場にいた。
山の縁が黄金色に輝いていて、もうすぐ日が昇る事がわかった。







鴉に先に連絡をするように頼んで山の中を駆ける。
彼女を落とさないよう慎重に、かつなるべく急いで向かうと、朝餉の匂いがする前に蝶屋敷に着いた。





それから胡蝶さんに診てもらって、外傷の無い彼女は一人部屋で様子を見ることになった。






それから二週間、Aはまだ目を覚まさない。ずっと眠り続けたままだった。

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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時

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