星が鳴る【時透無一郎】 (ページ27)

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星27個ページ27

時透視点

僕はゆっくりと空を見上げた。
たくさんの星が瞬いている。手を伸ばせば簡単に届きそうなのに、実際は遠く離れている。

立て続けにあった任務の後、少し疲れたなと思いながら屋敷への道を歩いていた。
道端の小石を蹴りながら考えていたのはAのことだった。

最後に会ったのは、合同任務の時だ。
甘露寺さんが会う度に話をしてくれるけど、聞けば聞くほど会いたいと思うようになった。

力加減を間違えて、小石が飛んでいき草むらの中に着地する。
はぁっと吐き出す息の音だけが聞こえてくる。
そんな静かな夜だった。

「アンタ!!今スグ北北西に向イナサイ!!」

鴉の声が、静かな森に響く。
北北西、距離はどれくらいだろうと思いながら走り出した。

どれくらいそうしていたんだろう。
着いたのは夜だからかもしれないけど、ずいぶん寂れた雰囲気の村だった。

「鬼ガ出ルノハ、向コウノ墓地！何ガアッテモ動揺シナイデ!!ドンナコトガアッテモ!!」

耳元で大きな声を出す鴉。
何があってもなんて言うけど、今からいったい何が起きるんだろう。

鬼が出たんだろうけど、この墓地に身を隠すとは思えなかった。
朝になったら、ここはちょうど日の当たる場所だからだ。

「……ァァァ………!!」

その時、悲鳴のようなものが聞こえてきた。
声の方を向くと、大きな桜の木が異質な雰囲気を放っていた。

それが少し気になって、念のために調べる。
近づくごとに悲鳴は大きく、はっきりと聞こえるようになっていく。

根元にたどり着いた時には、聞いてる方が耳を塞ぎたくなるような悲痛な声が響いていた。
その声に聞き覚えがあった。

Aの声。

それに気づいた時、頭上の木の枝に鬼がいるのがわかった。
刀を抜いて、すぐ様頸に刃を振るう。

鬼は呆気なく頸を斬られた。
抵抗も何もせず、むしろ斬られる時を心待ちにしていたみたいだ。

口元に笑みを浮かべながら落ちてくる頸。
微かに唇が動いた。

＿＿君に救えるかな？

その言葉を理解した瞬間、足下に穴ができた。
蓋が取れたみたいに悲鳴が更に大きくなる。
僕はその穴の中に、無理に抗おうとはしないで重力のままに落ちていった。