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星24個 ページ24

「………お…ゃん…お姉ちゃん?」




その声で私は目を覚ました。
視界いっぱいに広がるのは、妹のアカネの顔。
その事情に何故か心の底から安堵して、目から大粒の涙が流れる。





「よかった……、よかった……!」





うわ言のように呟く私を、何が起きているのかわからないといった表情でアカネは見ていた。
コホコホと合間に咳の音が混ざる。





私の妹は、生まれた時から病弱だった。
顔立ちなんて女の私ですら見惚れるほど整っているのに、頭だってそこらの大人よりは良いのに外を出歩けない。
いつ発作が起きるかわからないからだ。







アカネが生きるためにはお金が必要だった。
父も母も去年の七夕に死んでしまった。竹を貰いに行った帰りに、鬼に襲われてしまったそうだ。
頼れる大人がいないから、近くのお屋敷のお手伝いをしてお金を貰っていた。







そこの人は優しい人ばかりだった。
妹の事を知ると定期的にお医者さんを連れてきてくれたり、桃をくれたりもした。
体の大きいおじさんは最近は物騒だからと、護身用の体術を教えてくれた。






朝早く起きて、夜遅くまで働きに行く生活は大変だったけど苦じゃなかった。
アカネと一緒にご飯を食べられないことだけが寂しかった。







顔を合わせる時間が減ってしまったからなのかもしれない。アカネと私がすれ違うようになったのは。





その日、私は初めておじさんに勝ててウキウキしながら家に帰った。

もしアカネが起きていたら、今日のことを話そう。起きてなかったら書き置きにして、枕元に忍ばせようと思うほどには。





満月が夜道を照らしていた。
自分の家の戸を開けると、ツンっといつもと違う臭いがした。
頭の中で最悪の場合を考えてしまう。





草履を脱ぐことも忘れて、アカネの布団が敷いてある部屋に急ぐ。
そこは、もぬけの殻だった。




ペタンと足の力が抜けて座り込む。
妹がいなくなってる。その事実だけが、今の私にとって全てだった。





下唇を噛んで泣きそうなのを堪えていると、後ろから人の気配がした。
振り返ると、アカネが立っていた。でも、朝までと雰囲気も臭いも違っている。瞳もほんの少し変わっている気がした。





兎に角無事そうでよかった。でも、次の瞬間に私の安堵は深い深い絶望に変わった。








「お姉ちゃん、私鬼になったよ。」

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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時

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