星17個 ページ17
善逸視点
「あのさ、Aちゃんは何に絶望してるの?」
彼女と一緒に鬼と戦い始めてからずっと抱いていた疑問。
頸を斬ってからは、彼女の優しい音を掻き消すくらいの大きさで別の音が聞こえてくる。
「どうして、そんな事聞くの?」
聞く前と何も変わらない声音や微笑だけど、警戒の音が混ざってくる。
「ずっと”音”がしてるから、心配になって……」
真っ直ぐ俺を見てくる視線に耐えられなくて、俺は顔を下げた。目はまるで心の底まで見透かすみたいで、嘘を吐いたら適当な言葉であしらわれてしまいそう。
「むしろ、なんでみんな絶望しないの?私たちが斬っているのは、元人間の鬼なんだよ?」
Aちゃんの顔に影が落ちる。
目に宿っていた光は、今では姿を潜めて瑠璃色の瞳は深い色に染まっている。
月が、厚い雲に隠れた。
山の中には明かりなんて無くて、互いに輪郭しか見えない。
「今日斬った鬼や、今まで斬った鬼にだって家族がいて、友達がいて、好きな人がいて、幸せだったはずなのに……。
私たちが斬っているのは、そんな鬼ばかり。」
淡々と話す彼女の音は、絶望なんて言葉じゃ表せなかった。
聞いてるだけで悲しくなるくらいの怒りや寂しさや、後悔の音。
何か言おうと思っても、言葉が出てこない。
嘘の音なんて微塵もしない。
全部本当のことなんだ。
「私の妹もそうだったから……」
今までで一番悲しい声。
ハッとなって顔を上げると、雲の隙間から月が顔を出した。
輪郭だけじゃなくて、表情まで見えるくらい明るく照らす。
「ちょっと話しすぎたね。私が話したことは忘れていいから。」
Aちゃんはにこりと笑って、歩き出す。
周りは鬼以外の何かが出そうなほど暗い森。もし、すぐそこの茂みから何かが出てきたら……。
そう考えただけで、俺の膝はガクガクと震える。
「いぃやぁあぁ!!待ってェ!!置いてかないでェ!!」
俺は必死にAちゃんの背中を追いながら、月明かりに照らされた一瞬のことを思い浮かべる。
たった一瞬だったけど忘れられない。あの時、彼女は今にも泣き出しそうな、そんな顔をしていた。
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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時