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星16個 ページ16

暗幕のように、目に被さる髪を横に流す。
軋む床板の上に転がった短刀を拾い上げ、構える。



「さてと、仕事はきっちりこなしますか。」




「は?……ふざけんな、ふざけんな、ふざけんなァ!!」




老婆の皮を脱いだ女の鬼は、顔を歪めて叫ぶ。
同時にチリチリと身を焦がすような緊張の糸が部屋に巡る。
鬼は結んでいた長い髪を振り乱した。




「若い女が喰えると思ったのに!!クソッ!!クソッ!!クソッ!!」




鬼が地団駄を踏むと、髪が異様な速度で伸び、生き物のようにうねうねと動く。ちょっと気持ち悪い。




そんな事は露ほども気にせず、我妻君はシイィッと独特の呼吸を行っている。
刀に手をかけて、鍔を指であげて刃がちらっと見えた。




「雷の呼吸・壱の型霹靂一閃」




……居合だ。
だが、頸を斬ろうとする彼に髪が迫る。一瞬鼻を刺激した臭いに、髪に掠ってすらいけないような、そんな考えに襲われる。




彼の前に迫り来る髪に刃を当て、切る。
それはバサッと床に落ちると蛇みたいに動き回った。





「はぁ!?なんで掠りもしないのよ!?クソッ!!」





悔しがる鬼を視界の端に入れながら、彼の方を見る。
彼はまだ構えの体勢を崩さず、今にも刀を抜かんという気迫が通じてきた。




「私が髪をどうにかするから、我妻君は頸を!」




「わかりました!」



それを聞いて、私は髪鬼と向かい合う。




ニヤニヤと嫌らしく嗤うそれは、馬鹿の一つ覚えみたいに私目掛けて髪を向かわせる。

それを叩き切ると、髪の奥から鬼は鋭い爪を伸ばしていた。




それが到達する前に左足を半歩下げ、鬼の腕を掴んだ。私に向かってきていた勢いをそのままに投げ飛ばす。




鬼は水瓶に当たり、それは粉々に割れた。
痛むのであろう背中を押さえながら立ち上がる鬼の髪を刈り取るようにして切る。





「雷の呼吸・壱の型霹靂一閃」




間髪入れず我妻君が抜刀し、髪鬼の頸が宙を舞った。でも、どんなものも何時かは落ちる。
ゴトッと音を立てて床に転がった頸は、はらはらと涙を流していた。





「我妻君自分のこと、弱いって言ってたけど、すごく強いね。」




「え!?いや、そんなことないよ!」





月明かりに照らされた道を歩く。
我妻君は何か真剣に考えているようで、口数は少ない。
山に入る頃、彼は何かを覚悟したような顔で口を開いた。




「あのさ、Aちゃんは何に絶望してるの?」

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☆カペラ★ - こんばんは、これめっちゃ良い話ですね!ハマりました!!時透君カッコいい!!更新頑張ってください! (2020年1月14日 21時) (レス) id: 04526cdaa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コゲパンです。 | 作成日時:2019年9月7日 23時

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