憂鬱 - 3 ページ18
〜帰り道〜
獄寺「じゅ、10代目、アイツは…」
声を忍ばせる獄寺。
ツナ「あいつって……Aちゃん？そういえばいないな」
山本「なあ、獄寺。
なんでそんなに嫌がるんだ？ 友達くらいなってやればいいじゃねーか」
この質問はAがするように頼んだものだった。
理由がわかれば対策できるだろう、ということだ。
獄寺「…………」
山本「？」
獄寺「友達になるのはわかる。 9代目の指示だ。
握手もまあわかる。 だが……
なんでハグまで！ あんなの恥ずかしすぎんだろ！」
ツナ「ああー…」
ツナはわからんでもない、という顔をする。 山本はピンときていないようだが。
サッ
3人の前に影が横切る。
「話はわかった」
Aだ。 どうやら木の影に隠れて全て聞いていたようだった。
ツナ(そういえばこの子盗み聞き得意だもんな…)
「………ハグはその、クセみたいなもので…」
言いにくそうに目を逸らすA。
獄寺「なんだそりゃ？」
「……相手の温かさがわかれば考えてることもわかるでしょ？
…亡くなった母がよくしてくれたの。 大好きだったんだ」
初めて見せる愁いを帯びた顔に、その場にいる誰もが釘付けになった。
獄寺「！！」
ツナ「Aちゃん…」
「でも嫌なら仕方ない――」
獄寺「ほらよ」
バンッ 勢いよく、Aの前に手が差し出された。
「！」
獄寺にも幼い頃に母と別れた過去がある、それと重ねたのだろうか。
半分無意識のうちに手を出したことが、時間の経過とともに羞恥を増した。
獄寺「やらねぇならやめんぞ」
「ううん！」
手を握った後、いつも通りぎゅっと抱きしめる。
しかしその一連の動作は、これまでの中で一番優しいものだった。
「よろしく、獄寺さん」
獄寺「お、おう」
耳を赤くして少し気まずそうに目を逸らすその姿は、クールな普段の様子よりもかなり年相応に見えた。
【END】
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作者名：波紋セラーノ | 作成日時：2020年4月26日 16時
