知っている筈なのに、とは。 ページ9
中島side
『ハァイ敦くん、昨日ぶりだねぇ』
「昨日だと」
国木田さんが小さな声でぽつりと呟いた。
何時もなら慌てて誤魔化したり苦笑したりするけど、今の僕にそんな余裕なんてなかった。
仮にも敵対しているのだから、お互い連絡先を好感していないしそういう話もしていない。
けれどAちゃんは僕の携帯に掛けてきた。
喉がカラカラと乾いているのを感じる。
『次に逢引する日を決めたいトコなんだけど、残念ながら別の用がある』
「用?」
国木田さんが怪訝そうに眉を顰めた。
『あ、その声はくにきーださんだね、久しぶり』
「早く要件を言え」
『相変わらずだなぁ。なに、ちょっとした頼み事だよ。難しい事じゃない、近所にお買い物行くよりももっと簡単な頼み事さ。
__福沢社長を渡してほしいンだ』
とてもさらっと。
お母さんが子どもに「これ買って来て」という時と同じ様に、自然に言った。
『君等が福沢社長を渡せば、たった一人の犠牲で『共喰い』は終わる。逆に渡さなかったら、
誰も言葉を発さなかった。
判っていた。
だけど、僕はそんなことしたくない。
どっちかの長が、誰かが死ななきゃいけないなんて。
あっちゃならない...!
「ッ待って、もっと他の方法がある筈だ。どっちの首領も助ける方法が!」
「敦...」
「それに僕は......Aちゃんと闘いたくない」
方法がどうとか、そんな事よりもこっちが僕の本心だった。
友達だと、思っているから。
何度も助けてもらった。
ポートマフィアで、参謀だとしても、彼女と話す時間は楽しかった。
鏡花ちゃんは今此処にいないけど、きっと僕と同じ事を言い、思うだろう。
それに、
「君だって、同じ__」
『敦くん』
誰だ。
ぞくり、とまるで冷凍庫に入れられたんじゃないかと思うほどの寒気が全身を襲う。
凍ったように身体が動かない。
否、動けない。
電話越しにビリビリと伝わる"これ"は、紛れもない__
殺気。
『私がそこで頷くような、"善い人間"に見える?』
冷たい声が頭の中で木霊する。
こんなAちゃん、知らない。
僕の知らない、
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玲佳(プロフ) - 凄く面白かったです! (2019年12月31日 19時) (レス) id: 30c7137208 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ちびうささん» そう言っていただけて光栄です。イラスト…!!是非お願いします、ありがとうございます!!待ってます(正座)更新頑張りますね! (2019年1月29日 0時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
ちびうさ(プロフ) - この小説シリーズ面白くてあっという間に読んでしまった、、、。私ツイッターとかでお絵かきしてるのですがよろしければ参謀ちゃんのイラスト描かせていただきたいです!!更新楽しみに待ってます!!! (2019年1月27日 17時) (レス) id: f5433967f3 (このIDを非表示/違反報告)
はつり(プロフ) - RANAさん» もちろんです!ありがとうございます〜 (2019年1月18日 20時) (レス) id: 3cbdf99785 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - はつりさん» わざわざありがとうございます!!和装徳永とても嬉しいです!!!おにぎりは森さんに買ってもらったんですね(( ありがとうございます!!もしよろしければ小説に載せたいのですがいいでしょうか? (2019年1月18日 19時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2018年7月1日 18時