【文スト】参謀とは。7

三毛猫の正体とは。 ページ30

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「済みません福沢殿。武では勝てぬ故...汚い弁舌戦に持ち込ませて頂きました」


悪気を感じられない謝罪に、福沢は微かに目を開けた。
その先には、自分達を見つめる三毛猫がいた。

最期に見るのが三毛猫か。
猫好きの福沢にとって、悪い最期ではないのかもしれない。


これで双方の戦闘を止められるなら、と福沢は目を閉じた。


「これも...宿命か」

「残念です。
...福沢殿、貴方が死ぬ前にもう一つ、私が勝たねばならない理由を言いましょう」


閉じていた瞳を再び開け、森を見上げた。

そして目を疑った。
何故なら森が今まで見たことのない、何ともいえない表情をしていたからだ。


「私には娘がいます。あの子をこの世界に一人遺して死ぬ覚悟は、私には出来ていません」


そう言って、手に持つ手術刃(メス)を振り上げた。


瞬間、建物が大きく揺れた。
突然の出来事に体勢が保てなくなった森は床へ倒れ込んだ。


暫くして揺れは止んだ。
揺れの衝撃で建物は崩れ、辺りには瓦礫が散乱している。

福沢と森は瓦礫の上に倒れていた。

それを見つめる三毛猫。
ぐわんと顔が歪み、徐々に形が変わっていった。


それは、"人"だった。


「全く、面倒な奴等じゃのう。御前等は！」

「な...」

「夏目...先生......？」


予期せぬ人物に、二人は目を丸くした。


「全く隠居爺にはラクをさせろ！何の為に御前等に街を任せたと思っておる！」


フシャー！と猫のように起こっているのは名を、夏目漱石。
＿＿能力名『吾輩は猫である』


すると、「夏目殿ぉー？」と暗闇から2つの光が現れた。


「何処ですかぁ？」


行方不明になっていた花袋だ。
崩落の事は知らされていなかったからか、土埃塗れである。


夏目曰く、花袋が"死の家の鼠"の潜窟(アジト)を割り出したという。

けれど相手は狡猾の権化。
追手を察知すれば暗中へと消え、二度と捉えられない。


「では何を好機(チャンス)とする？」


夏目の問いに二人は思考を巡らす。
そして一つの答えにたどり着いた。

それは、今のこの状況だ。
2人の長が生死不明の今、ドストエフスキーは状況確認の為に潜窟(アジト)に留まる。


「黄金時間はウイルス発症迄の十二時間、部下共には既に情報を渡しておる。儂が見込んだ御前等の組織じゃ。鼠如きが食い荒らせるモノではない。





2人とも、それを証してみせよ」


さぁ、反撃開始だ。

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