電話とは。 ページ22
No side
「逃げられました」
『あっそ』
通信を切り、一方的に会話を終わらせた。
不機嫌とも捉えられるその無表情さは、近くにいる構成員2人を怯えさせた。
Aは気にも掛けず、頭の中で思考を続ける。
恐らく探偵社は再び此処へ来るだろう。
ウイルスの異能者を見つけられなかった彼らは戦う他ない。
例え福沢の命令を破る事になっても、福沢を扶ける為に彼等は動く。
『...これ、梶井をに渡してきて』
引き出しから取り出した紙に何かを綴り、それを一人の構成員に渡す。
震えた声で返事をし、逃げるように部屋を出ていったのを横目に見ながら大きく息を吐いた。
チラリと鏡を見れば、いつも以上に濃い隈が目の下にあった。
少しやつれたようにも見える。
当たり前だ、森が倒れてからほとんど食べも寝てもいないのだ。
森はまだ目を覚まさない。
それどころか、症状は悪化するばかりだ。
ふと6年前__Aが十郎に攫われた日__が頭に浮かんだ。
Aを見つけるためあらゆる手を使い、中也と太宰が行った後すぐに森もあそこへ行ったという。
___その姿はマフィアの首領というより父親だった、あの冷酷な鴎外殿がじゃぞ?___
後日紅葉がこっそり教えてくれたのを思い出す。
なら、今度は__
「あ、あの...徳永参謀」
気弱そうな声が聞こえ、意識が現実に戻る。
もう一人の構成員がオロオロしていた。
「私は何をすれば...」
『...1時間以内に探偵社が来る筈。入り口の警備固めておいて」
慌ただしく出ていった。
扉が閉まり、静けさを取り戻す。
Aはソファに体重を預けた。
くしゃ、と前髪を搔き上げる。
『何でもいい...奴の手懸かりさえ見つければ.........見つける?』
頭の中で風船が弾けた。
ガバッと起き上がり、パソコンにしがみつくようにして操作した。
タイピング音とマウスを動かす音が響く。
その最中、携帯の着信音が鳴った。
液晶画面を見れば知らない番号が表示されていた。
少し眺めてから片手で画面をスライドし、耳に当てた。
『...はい、徳永』
「お久しぶりです、Aさん」
キーを叩く指が止まった。
「お元気でしたか?」
『ドストエフスキー...』
携帯を握る手が強くなった気がした。
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玲佳(プロフ) - 凄く面白かったです! (2019年12月31日 19時) (レス) id: 30c7137208 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ちびうささん» そう言っていただけて光栄です。イラスト…!!是非お願いします、ありがとうございます!!待ってます(正座)更新頑張りますね! (2019年1月29日 0時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
ちびうさ(プロフ) - この小説シリーズ面白くてあっという間に読んでしまった、、、。私ツイッターとかでお絵かきしてるのですがよろしければ参謀ちゃんのイラスト描かせていただきたいです!!更新楽しみに待ってます!!! (2019年1月27日 17時) (レス) id: f5433967f3 (このIDを非表示/違反報告)
はつり(プロフ) - RANAさん» もちろんです!ありがとうございます〜 (2019年1月18日 20時) (レス) id: 3cbdf99785 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - はつりさん» わざわざありがとうございます!!和装徳永とても嬉しいです!!!おにぎりは森さんに買ってもらったんですね(( ありがとうございます!!もしよろしければ小説に載せたいのですがいいでしょうか? (2019年1月18日 19時) (レス) id: 5c7b126db4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2018年7月1日 18時