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｢まさかのラーメン｣
｢おう、ラーメン｣
商人たちの賑々しい声から遠ざかり、閑静な路地を迷いなく突き進んで行ったトントンさまが足を止めたのはぽつんと道端に置かれた屋台の前だった。
｢らぁめん｣と異国の文字が書かれた暖簾を潜ると、人の良さそうな笑顔を浮かべた初老の男店主が｢いらっしゃい、トンの旦那。…と、初めましてのお嬢さん｣と挨拶をくれる。小さな屋台に客の姿はなく、店主も暇をしていたのか、傍のテーブルに積まれた漫画を読み耽っていたようだ。
｢珍しいですなぁ、旦那が女連れなんて｣
｢これは…まあ、ただの見張り役で｣
｢トントンさまは頻繁に此処へ？｣
｢そうですねぇ、月に三回くらいは…｣
｢言わんでええ、言わんでええから｣
トントンさまはこのラーメン屋の常連客らしい。好物なんだろうか。店主と他愛もない世間話を始めたトントンさまのお顔は何処となく楽しげで、この人こんな風に笑うんだなぁ、なんてその横顔を見つめる。
ところで、だ。
｢トントンさま、数時間前に昼食を済ませたばかりかと思いますが。これはカロリーの過剰摂取です｣
｢……だから連れてきたくなかってん。ええやろ、別に。好きなもん食うのが何よりのストレス発散やねんから｣
｢……な、るほど？｣
そうだろうか。私にとって食事とはただの生命維持の為の行動であるから彼の考えはちっとも理解できそうになかった。それに、故郷の地下街には美味しい食べ物なんて何処にもないし。
｢メイド服のお嬢さん。お好みは？｣
｢わ、私はまだお腹が、｣
｢無理にとは言わへんけど、ここのラーメンは世界一やで｣
｢……う。そんなに、美味しいんですか｣
｢じゃなきゃわざわざ大事な仕事放ってこんな所までこうへんよ｣
｢…………トントンさまと同じもので！｣
ないとはいっても、美味しいものを口にしたことがない訳ではない。昼食後でそれほどお腹も空いていない。しかしあんなにも顰めっ面ばかりだったトントンさまが表情を和らげてこの店のラーメンを褒めるもんだから勢いのままオーダーしてしまった。
これで大したことなかったらあとで摂取カロリー分の運動に付き合ってもらうとしよう。何だか罪深い香りが漂う路地で、寂しい屋台に背中を並べた私たちは大した会話もないまま煮える鍋を暫く見つめ続けた。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね！tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (
レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(？)更新頑張って下さい！！！！好きです！！！ (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、ｺﾒﾝﾄありがとうございます~~！ かなりｷｬﾗが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです！ ゆっくりではありますが更新がんばります~~！ (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω｀*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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